大学に通っている人の中には、中退をして専門学校に行って専門的な知識やスキルを身に付けたいと考えている人もいるのではないでしょうか。
大学を中退して専門学校に行くことで、将来仕事でも活かせるような専門的な知識やスキルが習得できたり、就職先を紹介してもらえるといったメリットがある一方、学歴が大卒でなくなることや、職業選択の幅が狭まるといったデメリットもあります。
また、専門学校卒になることで就職が有利になる業界もあれば、不利になる業界もありますので、専門学校に通う意義を見出した上で大学を中退するのか検討していく必要があります。
この記事では、大学を中退して専門学校に行くことを考えている人が知っておきたい知識について、分かりやすく解説していきます。
大学中退から就職を考えている人は以下の記事も見つつ、どういった選択をしていくか考えてみましょう。
大学を中退して専門学校に行くことは可能
そもそも大学を中退して専門学校に行くことは可能です。
大学の学則や法律に反することはありませんし、大学を中退するタイミングが定められているわけではありません。自分が専門学校に行きたいと思ったタイミングで大学を中退しても問題ないのです。
大学を中退して専門学校に行く基本的な流れは以下の通りです。
- 通いたい専門学校を決める
- 大学を中退することを親に相談する
- 大学の学務課で中退に必要な書類を受け取る
- 大学に中退を申し出る
- 専門学校の入試を受けて合格する
- 専門学校に入学する
大学を中退するタイミングは専門学校の入試日程によって前後することがありますが、基本的には上記のような流れで専門学校への入学を目指すことになります。
大学を中退して専門学校に行くメリット
大学を中退して専門学校に行くことには、以下のようなメリットがあります。
- 本当に興味があることだけを学べる
- 仕事でも活かせる専門知識やスキルが習得できる
- 就職先をあっせんしてもらえることもある
それぞれのメリットをしっかり認識した上で、専門学校に進路変更するのか検討していきましょう。
本当に興味があることだけを学べる
大学は卒業までにたくさんの単位を取得しなければなりません。
所属は学部で分かれてはいますが、卒業までの必修科目として自分が興味のない単位を取得しなければならないこともあります。
一方、専門学校の場合は初めから学べる知識が限定的になっていますので、本当に興味があることだけを学べるといったメリットがあります。
興味のないことは専門学校で学ばなくて良いため、自分の強みや興味の方向性を存分に伸ばせる点は専門学校ならではの特徴と言えます。
仕事でも活かせる専門知識やスキルが習得できる
大学では高いレベルの勉強に向き合うことができるものの、就職後の業務で活かせるような知識や経験はあまり習得することはできません。
だからこそ、大学の新卒の面接では勉強に関係のないエピソードを話したとしても就職ができるようになっているとも言えます。
一方、専門学校の場合は専門的な分野の知識だけでなく、実務レベルでの知識も教えてもらうことができますので、そのまま会社に就職してスキルを発揮できるといったメリットがあります。
例えばプログラマーの専門学校に通うことができれば、プログラミングに関する基本的な知識はもちろん、授業で長期間に渡ってプログラミングに向き合うことができるため、そのまま社会でプログラマーとして働けることが期待できます。
勉強と仕事を直結して考えたいような人にとっては、大学の勉強よりも専門学校の勉強の方が向いているとも言えるでしょう。
就職先をあっせんしてもらえることもある
大学の目的は、論文発表を経てその大学の研究成果を周囲に認めてもらうことが主となっています。そのため、大学に通う学生がどれぐらい就職できたかどうかについては、本来大学の価値を図るものではないとも言えます。
一方、専門学校は初めから専門的な領域での就職を目的に運営されていますので、ほとんどの専門学校で就職率を高めることを1つのゴールにしています。したがって、専門学校を卒業する際には、就職先をあっせんしてもらえるといったメリットがあります。
単なる就職支援だけでなく、就職先と直接マッチングまでしてくれますので、就職活動に不安があるような人でも専門学校の推薦をしてもらった上で就職ができます。
大学を中退して専門学校に行くデメリット
大学を中退して専門学校に行くことには、以下のようなデメリットも挙げられます。
- 学歴が大卒ではなくなる
- 職業選択の幅が狭まる
- 学費が高い
大学を中退して専門学校に通うとするときは、メリットだけでなくデメリットも合わせて理解した上で、後悔しない選択をしてください。
学歴が大卒ではなくなる
大学を中退して専門学校を卒業した場合、学歴は大卒ではなく専門学校卒となります。
専門学校卒は一般的に高卒以上の学歴であると言われていますが、同時に高専卒や大卒以下を学歴と認識されていますので、就職活動でデメリットになることがあります。
学歴が大卒になることの就職活動におけるデメリットとしては、応募できる求人が限られてしまうという点が挙げられます。
求人の中には応募条件に大卒以上の学歴と指定されているものがあります。
専門学校卒となることで大卒以上を募集する求人には応募できなくなる点は、あらかじめ認識しておく必要があるでしょう。
職業選択の幅が狭まる
大学では在学中に幅広い勉強をすることになりますので、大卒として就職活動する際は、ほぼすべての業界の中から応募先を選んで就職することが可能です。
一方、専門学校の場合は習得する知識やスキルが専門分野に偏ってしまっていますので、職業選択の幅が狭まるといったデメリットを感じることになるでしょう。
例えば、シェフを養成するような専門学校に通った後、IT系の業界の会社に就職することは難しいと考えられます。
すでに自分の将来なりたい仕事が固まっているような人はデメリットとして感じないかもしれませんが、少し興味がある程度で専門学校に通った人は、将来仕事選びの際に後悔してしまうことがあるかもしれません。
学費が高い
一般的に、大学よりも専門学校の方が学費が高いといった点もデメリットの1つとして挙げられます。
専門学校に進学する際にかかるお金としては、受験料や生活費を除くと、初年度で入学金と授業料と設備費が上げられますが、かかるお金の種類としては大学とそこまで大きな違いはありません。
しかし、それぞれにかかってくるお金そのものが大学よりも高いといった特徴があります。
例えば、文部科学省令に基づく国立大学の授業料の標準額は、年間で535,800円と定められています。一方、りそな銀行の調べによると、ビジネスやIT系の専門学校の年間授業料は635,000円とされており、年間でおよそ100,000円の違いがあるといった調査結果が見られます。
また、専門学校の場合は設備費や入学金が大学よりも高く設定されている傾向にあり、とにかく様々な場面でお金がかかることは避けられません。
大学を中退してしまうと奨学金を借りることができなくなることもありますので、経済的に厳しいような人が大学を中退して専門学校に行くと、お金に苦労することが考えられます。
専門学校に行くと就活が有利になる業界
大学を中退して専門学校に行くと、以下のような業界の就活で有利になることが考えられます。
- デザイン業界
- IT業界
- 飲食業界
上記のような業界に就職したいと考えている人は、大学を中退して専門学校に行っても後悔しないでしょう。
それぞれ詳しく解説します。
デザイン業界
デザイン業界は、専門的な知識やスキルが非常に重要な業界となりますので、大卒よりも専門学校卒の方が就職で重宝される傾向にあります。
中にはデザイン系の専門学校に通ったことがある人だけを採用しているような会社もありますので、デザイン業界に就職したい人は、デザイン系の専門学校に通うことをおすすめします。
IT業界
IT業界の中でも、プログラマーやシステムエンジニア、CGクリエイターなど技術職寄りの仕事に就職したい場合は、大卒よりもIT系の専門学校に通った方が就職できる可能性が高まります。
IT業界の技術職は学歴よりもスキルや実績が重視される世界です。
そのため、特にIT系の知識を習得してこなかった有名大学の大卒よりも、専門学校でプログラミングやエンジニアリングを学んできた専門学生の方が、有利に選考を進められることが少なくありません。
IT業界の技術職は今後も高いニーズが見込まれていますので、手に職をつけられるような技術系の仕事に就きたい人は、IT系の専門学校に通うことも良い選択となるでしょう。
飲食業界
飲食業界の中でも、高い調理スキルを持ったような調理師やフレンチのコックなど、技術が重視される仕事に就きたい場合は、飲食系の専門学校に通うことがおすすめです。
大学では栄養学や人体学など、食物の栄養に関する学術的な知識を身に付けられる学部こそありますが、食べ物を調理するようなことそのものを学べる学部はほとんどありません。
一方、専門学校であれば授業で料理を習得できるなど、調理に直結する知識をインプットすることができます。
それだけでなく、専門学校によっては提携している料理店やレストランに専門学生が体験入店し、実際に料理長として働くイメージを高められるといったプログラムを用意しているコースもあります。
飲食業界の中でも第一線で調理師として活躍していきたいような人は、飲食系の専門学校に通うと良いでしょう。
専門学校に行くと就活が不利になる業界
大学を中退して専門学校に行くと、大卒を中心に募集をしているような以下の業界に就職が難しくなってしまいます。
- インフラ業界
- メーカー業界
- コンサル業界
いずれも大手の会社が多い業界になりますので、安定した大手企業への就職を漠然と考えているような人の場合は、大学を中退せずに大卒として就職活動したほうがいいかもしれません。
インフラ業界
水道やガス、電気など、生活になくてはならないインフラを支えているようなインフラ業界は、誰もが知るような会社がほとんどであり、大卒を中心に募集をかけています。
大卒の求人に専門学校卒の人は応募ができませんので、インフラ業界への就職をすることは非常に難しくなってしまうでしょう。
インフラ業界は大卒の中でも人気の業界の1つです。
インフラという人間が生活する上で欠かせないものを取り扱っているため、安定して働き続けられるだけでなく、平均的な年収が高いという点が魅力と言われています。
高待遇で安心して働きたいと考えている人は、大学を中退して専門学校に通うことは避けておいた方が良いかもしれません。
ただ、インフラ業界の中でも現場職に近い場合は、高卒以上の学歴の人を募集していることもありますので、気になるインフラ業界の会社がある場合は実際に求人を検索してみると良いでしょう。
メーカー業界
新しいものを作り上げるメーカー業界についても、本社勤務を目指す場合は大卒以上の学歴が必要になってくる傾向にあります。
メーカーの本社勤務の仕事としては、商品企画を始めとした企画職、法人向けの営業職、経理や総務などの事務系職種などが挙げられます。
取り扱っているものにもよりますが、メーカーは比較的業績が安定しているだけでなく、年収が他の業界と比較して高いなど、腰を据えて働きたくなるポイントが多数存在しています。
また、メーカーの本社勤務というと、周囲の人から良い反応をもらいやすいという点もメーカー業界に勤めるメリットとも言えます。
大学を中退して専門学校卒となると、メーカーの本社での就職は難しくなります。
工場スタッフなどであればメーカーで働くこともできますが、特に新しいものづくりに挑戦したいと考えている人は、大学を中退せずに卒業することを意識した方が良いでしょう。
コンサル業界
コンサル業界は多忙ではあるものの、身に付くスキルの幅広さや専門性が極めて高いことに加え、平均年収が総じて高いといった魅力があります。
コンサル業界で働く人の大半はコンサルタントです。
コンサルタントは幅広い知識を習得するだけでなく、頭の回転が速くなければならないため、地頭の良さが求められます。
地頭の良さを学歴で判断するコンサル会社も多く、専門学校卒だと書類選考の時点で見送りになってしまうことがあるでしょう。
仕事でのやりがいや高年収を狙いたいと考えている人は、専門学校ではなく大学を卒業できるように頑張ってみてください。
専門学校を目指す前に考えるべきこと
大学を中退して専門学校を目指そうとする際は、中退する前に以下のようなことを考えるようにしてみてください。
- なぜ専門学校に行きたいのか言語化する
- 大学に通い続けては学べない学問なのか確認する
- 休学という選択肢は取れないか
一度大学を中退すると、再入学や再受験をしない限り元に戻る事は基本的にできません。
後悔しない選択をするためにも、中退する前に上記のことを頭の片隅に置いた上で検討を進めていきましょう。
なぜ専門学校に行きたいのか言語化する
大学を中退して専門学校に通いたいと思った時は、まずなぜ専門学校に行きたいのかを言語化しましょう。
大学が嫌だからという理由だけで専門学校を目指してしまうと、将来就職できる幅が狭まってしまったり、習得できるスキルが偏ってしまうため、後悔する可能性が高まります。
また、専門学校に行く理由が言語化できた後は、志望する専門学校を選んだ理由もしっかりと言語化しておいてください。
専門学校で学ぶモチベーションを高めるだけでなく、専門学校の受験における面接対策にも繋がります。
大学に通い続けては学べない学問なのか確認する
既に解説した通り、大学ではなく専門学校を卒業することで、習得できる知識とスキルが良い意味でも悪い意味でも偏ることになります。
将来の選択肢を広く持つためには大学に通い続けるのがベストであることを考えると、現在通っている大学で学べない学問なのかは確認しておいた方が良いでしょう。
もし興味のある専門学校の分野の知識を、現在通っている大学でカバーできるのであれば、中退をしないに越したことはありません。
また、大学の別の学部の勉強に興味がある場合は、大学側に相談して学部を転籍させてもらえないか相談してみるのもおすすめです。
休学という選択肢は取れないか
大学を中退してしまうと元に戻ることは非常に難しくなってしまいます。
また、中退をしてから専門学校の受験をする場合、受験に失敗した後のリスクが高まってしまうことを考えると、まずは中退ではなく休学という選択肢を検討してみるのが良いでしょう。
例えば、大学を1年間休学して専門学校の受験勉強に取り組むようにすれば、もし専門学校に合格できなかったとしても、再び大学生として復帰することができます。
専門学校によっては、募集定員が少なく合格するのに苦戦してしまうことがありますので、大学中退という大胆な方法をいきなり取るのではなく、リスクを減らすために休学をするといった選択肢も考えるようにしてください。
専門学校に行ったあとの就活のコツ
大学を中退して専門学校に行った後、学んだ知識を活かせる職場に就職できるのがベストですが、中には専門学校とは関係のない領域の会社に就職を目指して就活をすることもあるでしょう。
専門学校卒になった後の就活のコツとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 大学中退理由を作り込む
- 自己分析をする
- 就職エージェントを活用する
専門学校卒となった後に就職活動をスムーズに進めるためにも、あらかじめこれらの就活のコツは認識しておいてください。
大学中退理由を作り込む
大学を中退した人が就職活動をする際、面接において大学中退理由を聞かれる傾向にあります。
大学中退は企業にとってネガティブに映るものですので、魅力的な人材ということをアピールするためにも、大学中退理由を作り込んでおくことが大切になります。
大学を中退して希望する専門学校に入学できた人は、大学中退理由を「進路変更のため」と回答して問題ありません。
ただ、進路変更という事実だけを伝えるのではなく、「なぜ大学を中退してまでその専門学校に通いたいと思ったのか」を自分の言葉で伝えることが重要です。
自己分析をする
就職活動をする際は、自分の強みやスキルを発揮できる職場かどうかを見極められるかが非常に重要です。
そのためにも、就職活動をする際は自己分析を徹底しましょう。
自己分析とは、今までの経験を棚卸しし、強みと弱みを言語化することで、自分に向いてる求人や職場を見つけるための分析のことを言います。
自己分析がしっかりできていると自己PRの深みが増すだけでなく、ミスマッチの少ない就職を実現することが可能です。
なお、大学を中退して専門学校に通った人が自己分析をする場合は、ターニングポイントとなる大学中退と専門学校への入学の判断をしたときの記憶を鮮明に思い出し、当時の判断基準をしっかりと分析し直すことが特に重要になってきます。
就職エージェントを活用する
専門学校に入学した後は、専門分野における会社の就職あっせんを受けられることがあるものの、それ以外の領域の会社に就職する際のサポートが手薄になる可能性があります。
1人で就職活動を進めるのに不安を感じるような人は、就職エージェントを活用することがおすすめです。
就職エージェントを活用することで、自分専任のアドバイザーが就職活動のスタートから終わりまでを全てサポートしてくれるようになります。
専門学校卒の人に対しては、専門学校で習得した知識を活かせるような求人を紹介してくれるようになりますので、求人を選ぶ手間暇をかけずに済むといったメリットも享受できます。
大学を中退したことが就職活動で不利になるのではないかと考えているような人は、若手就職支援のサポートに特化したキャリアスタートに相談をしてみてください。
よくある質問
最後に、大学を中退して専門学校に通おうとしている人によくある質問を2つ取り上げて解説します。
専門学校の中退率はどれくらい?
文部科学省の「令和5年度専門学校生の中途退学者・休学者数等の調査結果」によれば、専門学校生の中退者の割合は6.44%となっています。
大卒の中退率はおよそ2%となっていることを考えると、専門学校の中退率は相対的に高いと言えます。
ちなみに、専門学校生の中退理由のうち最も高いものは、「学生生活に適応できなかった・学ぶ意欲が低下してしまった」となっています。
このことからも、大学を中退して専門学校に通うとする際は、自分がなぜその専門学校に通いたいと思っているのかを前もって言語化しておくことが大切と言えます。
大学卒業後に専門学校を卒業した場合の最終学歴は?
大学を卒業した後に専門学校を卒業した場合の最終学歴は大卒となります。なぜなら、一般的に最終学歴は今までの学歴の中でも最も高かったものと認識されているためです。
ただ、履歴書においては時系列順で記載しなければならないため、大学を卒業した事実の後に専門学校の入学と卒業をしたことを書くことになる点は、あらかじめ認識しておいてください。