「国民健康保険はアルバイトでも入らないとダメなの?」
「国民健康保険料は高い?自分の収入でも払えるんだろうか」
保険制度は複雑なイメージがあり、つい調べるのが面倒で保険加入を後回しにしている方もいるでしょう。
しかし、国民健康保険あるいは社会保険に加入していないと、万が一の際に保険料以上の高額を支払うリスクもあります。
この記事では、アルバイト・フリーターの方に向けて、国民健康保険の加入義務や保険料の目安、社会保険との違い、そして損しない働き方の選び方までを、わかりやすく解説しています。
国民健康保険はアルバイトにも加入義務がある?

結論からいうと、日本に住んでいる人は原則として医療保険に加入しなければなりません。親などの扶養に入っている場合は自分で加入する必要はありません。
詳しく日本の国民健康保険制度について知っておきましょう。
(1)そもそも国民健康保険とは|社会保険との違い
まず国民健康保険とは国が定める医療保険制度のひとつです。
日本には『国民皆保険制度』というものがあり、日本に住む人は原則なんらかの医療保険に加入する義務があります。
一般的に、アルバイトの方や自営業の方は国民健康保険に、会社員の方は社会保険(健康保険)に加入することが多いです。
なお、親や配偶者の社会保険の扶養に入っている場合は、国民健康保険に加入する必要はありません。
国民健康保険と社会保険の健康保険の違いについて表にまとめました。
項目 | 国民健康保険 | 社会保険(健康保険) |
---|---|---|
加入対象者 | アルバイト、自営業者など | 一定条件を満たしたアルバイト、会社員、公務員など |
保険料の算定 | 前年の収入によって決定 | 給与額によって決定 |
保険料の負担 | 全額自己負担 | 会社と折半 |
運営主体 | 市区町村 | 協会けんぽ、健康保険組合など |
どちらの健康保険でも、国が医療費の7割を負担してくれる制度で、病院での自己負担額は原則3割で済みます。
つまり、病院でかかった診療費・処置代の合計が1万円であっても、窓口では3,000円の支払いで済むということです。
国民健康保険と社会保険の健康保険の大きな違いは、保険料の負担割合です。
国民健康保険の場合は全額自己負担ですが、社会保険の健康保険の場合は健康保険料は会社と折半になります。
(2)国民健康保険に加入しなければならない条件
アルバイトの方が自分で国民健康保険に加入しなければならない条件は以下のとおりです。
- 勤務先の社会保険に加入していない
- 親や配偶者の社会保険の扶養に入っていない
- 公的医療保険(共済組合・組合健保など)に加入していない
日本の国民皆保険制度により、生活保護受給者などの一部を除いて、社会保険の健康保険に加入していない人は国民健康保険に加入する義務があります。
ただし、以下の条件を満たしている場合は、親の社会保険の扶養として加入することができます。
- 親が会社の健康保険に加入している
- 年収が130万円未満
- 親と生計を共にしている
ただし、年収が130万円未満であっても、以下の条件を満たす場合はあなた自身であるバイト先の社会保険に加入しなければなりません。
これがいわゆる「106万円の壁」と呼ばれるものです。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上
- 2か月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない
- 従業員数51人以上の企業で働いている
つまり、社会保険に加入しておらず、親や配偶者の扶養に入っていない場合は、自分で国民健康保険に加入し、保険料を納付する義務があります。
アルバイトが支払う国民健康保険料はいくら?

アルバイトが国民健康保険に加入した場合に支払う保険料について解説します。
(1)年収別国民健康保険料の目安
国民健康保険料は自治体が運営しているため、お住まいの地域によって保険料は異なります。
そのため、正確な保険料を知りたい場合は自治体に問い合わせが必要です。
今回は、東京都大田区の国民健康保険料シミュレーターを使用して、20歳のフリーターの保険料を試算します。
年収 | 年間保険料 | 月額保険料 |
---|---|---|
100万円 | 123,380円 | 10,282円 |
110万円 | 133,780円 | 11,148円 |
120万円 | 144,180円 | 12,015円 |
130万円 | 154,580円 | 12,882円 |
140万円 | 164,980円 | 13,748円 |
150万円 | 175,380円 | 14,615円 |
160万円 | 185,780円 | 15,482円 |
170万円 | 196,180円 | 16,348円 |
180万円 | 206,580円 | 17,215円 |
190万円 | 216,980円 | 18,082円 |
200万円 | 227,380円 | 18,948円 |
上記はあくまで大田区の試算であり、自治体によってはさらに高いこともあるため、必ずお住まいの地域に問い合わせをしましょう。
(2)保険料が決まる仕組み
国民健康保険料は主に3つの要素によって決まる仕組みです。
要素 | 内容 |
---|---|
所得 | 前年度の所得に応じて所得割が加算される |
年齢 | 40歳から介護保険料が追加される |
自治体 | 保険料率や低額部分が市町村ごとに異なる |
まずベースとなるのが、前年度の所得です。
所得が多いほど「所得割」として保険料に上乗せされるため、収入の高い人ほど保険料は高くなります。
また、40歳を超えると介護保険料が加わるため、保険料は大きく増加します。これは40歳〜64歳の「介護第2号被保険者」に該当する人が対象です。
さらに、国民健康保険料は住んでいる自治体によっても大きく異なります。
保険料率や均等割・平等割といった定額部分は各市町村が独自に設定しているため、同じ年収でも地域が違えば支払額にも差が出ます。
ここまでが基本構造ですが実際の保険料を決定する上では、世帯人数や軽減制度の適用有無も大きなポイントです。
要素 | 内容 |
---|---|
世帯人数 | 「均等割」が1人ずつ加算されるため、家族が多いほど保険料が高くなる |
軽減制度 | 所得が一定以下の世帯には均等割・平等割の2〜7割軽減措置あり。多くの自治体では自動適用される |
たとえば、加入者が多ければその分「均等割(1人ごとに加算)」が積み上がるため、家族が多いほど国民健康保険料は高くなりやすいです。なお、社会保険は世帯の員数によって保険料が加算されることはありません。
一方で、一定の所得以下の世帯には軽減制度が適用される仕組みがあり、均等割や平等割が2割〜7割まで減額される場合もあります。
なお、軽減制度は多くの自治体で自動判定される仕組みで、申請は不要です。
フリーター・アルバイトにとって国保は高くつく理由

先ほどの国民健康保険料の金額を見て「高い!払えるかな」と不安になる方もいるでしょう。
実は国民健康保険は社会保険の健康保険と違って、保険料を全額自己負担しなければなりません。
社会保険は『労使折半』といって会社が保険料の50%を負担する仕組みですが、国民健康保険にはこういった仕組みがないためです。
例として国民健康保険料+国民年金の負担額(東京都大田区の国民健康保険料シミュレーター使用)と、社会保険(健康保険と厚生年金)の月額負担金額を年収ごとに比較しましょう。(本事例では、社会保険の加入条件は考慮しないものとします)
年収(万円) | 国保+年金(月額) | 社保(月額) | 差額(国保−社保) |
---|---|---|---|
100 | 約26,240円 | 約16,565円 | +9,675円 |
200 | 約32,920円 | 約29,645円 | +3,275円 |
300 | 約39,600円 | 約37,710円 | +1,890円 |
400 | 約45,940円 | 約45,750円 | +190円 |
500 | 約52,620円 | 約56,625円 | −4,005円 |
600 | 約59,300円 | 約67,500円 | −8,200円 |
年収500万円を超えると社会保険(健康保険と厚生年金)の負担額の方が国民健康保険よりも安くなりますが、それ以下の場合は社会保険の方が負担は安いです。
アルバイトが国民健康保険に加入しないとどうなる?

基本的に親や配偶者の健康保険の扶養に入っていない場合は、国民健康保険の加入は義務となります。
万が一加入していない場合は、以下のようなリスクがある点に注意しましょう。
- 保険料に延滞金がつく
- 保険料の延滞による督促が届く
- 財産が差し押さえられる
- 医療費が全額自己負担になる
本来支払うべき国民健康保険料が未払いという扱いになるため、保険料に延滞金がついたり、督促状が自宅に届いてしまいます。
さらに、督促を無視しているような場合は、財産の差し押さえをされるリスクすらあります。
また、国民健康保険に加入していないことで、医療費が全額自己負担になるため、万が一入院した際などの負担が大きくなる点にも注意が必要です。
アルバイトが知っておきたい「年収の壁」と保険・税の関係

日本には3つの年収の壁がありますが、該当の年収を超えると何が変わるのかを表にまとめました。
年収の壁 | 影響を受ける内容 | 超えるとどうなる? |
---|---|---|
103万円の壁 | 所得税 | 所得税が発生する (扶養控除の対象外になる) |
106万円の壁 | 社会保険 (健康保険+厚生年金) | 勤務先で社保加入が義務に (※条件あり) |
130万円の壁 | 社会保険の扶養 | 親や配偶者の扶養から外れ、自分で国保・国民年金に加入する |
アルバイトの方が上記の年収を超えると、所得税の発生や社会保険料への加入義務が発生します。
また、130万円の壁を超えると親や配偶者の社会保険の扶養から外れることになり、自分で国民健康保険に加入しなければなりません。
上記の壁と損しない年収については、以下の記事で詳しく解説しています。
保険料で損をしたくないなら社会保険に入れる働き方もおすすめ

国民健康保険の負担額が大きくて驚いてしまった方は、社会保険に入れる働き方に切り替えるのもおすすめです。
どうして社会保険がおすすめなのか、詳しく解説します。
(1)社会保険は会社と折半&将来の年金も増えるメリットがある
社会保険には「労使折半」といって、会社と労働者が保険料を折半する仕組みがあります。
つまり、社会保険料が20万円だとしても、労働者は半分の10万円を負担すれば社会保険による恩恵を受けられます。
さらに社会保険には健康保険以外に厚生年金、傷病手当などの手厚い保障がついている点もポイントです。
厚生年金に加入すれば、加入期間に応じて将来受け取れる年金額が上乗せされるため、国民年金のみの人よりも受給額が多くなります。
傷病手当など、万が一病気や怪我をした場合の給付金も充実しているため、長い目で見ればお得な制度といえるでしょう。
(2)正社員なら年収の壁を気にせず働ける
アルバイトやパートの場合、年収を「103万円以下」「130万円以下」に抑えることを意識するため働き方に制限がかかります。
しかし、正社員になれば社会保険の適用対象となり、そもそも壁を気にせず働けます。
結果として年収が上がり、将来のための貯金もできるようになるでしょう。
「将来の不安を減らしたい」「もっと安定して稼ぎたい」と考えているなら、社会保険完備の正社員を目指すのがおすすめです。
アルバイトの国民健康保険加入についてよくある質問

最後に、アルバイトの国民健康保険加入についてよくある質問をまとめました。
(1)アルバイトで月8.8万円を超えたらどうなりますか?
アルバイトで月8.8万円、つまり年収106万円を超えた方で次の条件を満たした方は、社会保険の加入義務が発生します。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上
- 2か月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない
- 従業員数51人以上の企業で働いている
なお、多くのアルバイトは「社会保険は高そう」と思っていますが、実は社会保険に加入した方が保険料の面でも保障の面でもメリットが多い可能性が高いので、デメリットばかりではありません。
(2)フリーターで保険証を持っていないのは恥ずかしいですか?
親や配偶者の扶養に入っていない限り、国民健康保険への加入は義務です。
そのため「恥ずかしいかどうか」よりも、国民健康保険に加入せずに保険料を支払わないデメリットを考えるべきです。
保険証を持たない状態を放置すると保険料に延滞金がついたり、最終的に財産を差し押さえされるリスクがあります。
恥ずかしいかどうかよりも、義務であることを理解して国民健康保険または社会保険の健康保険に加入すべきです。
(3)夫が国民健康保険に加入している場合は、妻である自分も自動で加入になりますか?
国民健康保険は原則『個人単位』での加入となり、扶養制度はないため、あなたの保険料はあなた自身が払う必要があります。
ただし、生計と世帯が同一である場合に限り、世帯主を筆頭として世帯合算でも保険料納付が可能です。
あくまで支払いをまとめるだけであり、実際の保険料は加入員数に応じて世帯主の保険料に「均等割」で加算されます。
世帯の被保険者一人ひとりに対して、定額で加算される国民健康保険料の一部のことです。
あなたが加入した場合、1名分の均等割が追加されて世帯主に請求されます。
社会保険完備の正社員を目指すなら、キャリアスタートへ
アルバイトに限らず、日本に住む方は原則として国民健康保険または社会保険に加入しなければなりません。
しかし、記事で説明したとおり一般的なフリーターの年収100〜200万円程度を稼いでいて扶養に入っていない場合は、社会保険の方が保険料負担も少なくなります。
国民健康保険と社会保険、どちらが得かは人によって違いますが、保障の厚さ・老後の年金・手当の充実度を考えると、社会保険の方が圧倒的にメリットが多い可能性が高いです。
とはいえ正社員で働くことに負担を感じる方、「社会保険のことがよくわからない」と思っている方も多いでしょう。
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