大学を中退していたとしても公務員になることは可能です。
公務員になるためには公務員試験に合格する必要がありますが、公務員試験の受験資格には年齢制限しか存在せず、学歴の制限がありません。
公務員は安定した働き方ができる一方で、民間企業よりも給料が低いことがあったり、異動が多かったりと、就職前に知っておくべきことがたくさんあります。
この記事では、大学を中退して公務員を目指す人が知っておきたい知識を網羅的に解説します。
また、公務員として働く向き不向きについても解説しますので、これから公務員を目指そうとしている人は記事の内容を参考にしてみてください。
公務員から民間企業へ切り替えを検討している人は以下の記事も参考にして進めていきましょう。
大学中退しても公務員になれる!
大学を中退したとしても公務員になることは可能です。
公務員になるためにパスしなければならない公務員試験にさえ合格できれば、大卒でも大学を中退していても公務員として働くことができます。
まずは公務員になるにあたっての条件や、高卒向けの公務員試験でどれぐらいの人数が毎年合格しているかなどについて解説します。
受験資格に学歴は関係ない
一部の地方公務員試験を除き、基本的に公務員試験は「高卒程度」「短大・専門卒程度」「大卒程度」の3つの区分で実施されます。
これはそれぞれの学歴でなければならないという意味ではなく、あくまでも試験難易度が異なるという意味合いになっています。
つまり、公務員試験を受験するのに学歴は関係ないということです。
たとえ大学を中退して学歴上高卒になっていたとしても、大卒程度の試験を受験することも可能です。
ただ、公務員試験は学歴の制限がないものの、年齢制限が存在します。
一般的に高卒程度の試験の上限は20代前半までと定められていることが多いため、仮に大学を中退して公務員を目指す場合は、20代前半のうちに公務員試験に合格する必要があるということを認識しておいてください。
また、公務員試験では欠格条項というものが定められています。
地方自治体ごとに定められている欠格条項に該当してしまった場合は、どんな理由があっても公務員試験の受験はできません。
ちなみに欠格条項の内容としては、「犯罪を犯したことがある人」「既に公務員として懲戒免職の処分を受けている人」「国に対して危険な行動を取ったことがある人」といったものになっていますので、多くの人には当てはまらない条項となっています。
高卒者試験では1年間で3,000人合格している
大学中退者は多くの場合、高卒程度の試験枠で公務員試験を受験することになるでしょう。2023年度の国家公務員採用試験において、高卒者試験の合格者数は3,407人となっています。
すべてが高卒の人というわけではありませんが、高卒程度の学力を持った公務員志望の人が1年間で3,000人程度合格しているという事実がありますので、大学を中退していたとしても、公務員試験対策を入念に行えば公務員になることは可能だと言えます。
大学中退者でも大卒向け試験が受験可能
先程の公務員試験の受験資格で触れた通り、大学を中退して学歴上高卒になっていたとしても、大卒向け試験を受験することは可能です。
大卒向け試験は高卒向け試験よりも試験難易度が高いものの、大学に入学できた学習力の高さを活かせば大学中退者でも大卒向け試験で合格することはできるでしょう。
言い換えると、大学を中退していたとしても、大卒と同じように働けるチャンスがあるということです。
公務員になった後は、どの試験枠で採用されたかによって配属や業務内容が異なってきます。高卒向け試験で公務員になった場合は一般職の扱いになりますので、比較的単純作業が多い業務となってきます。
もし大卒向け試験で公務員になることができれば、地域を盛り上げるための企画をしたり、市民に対して影響力の高い仕事に挑戦できたりなど、やりがいを持って働ける可能性が高まります。
大学中退者が知っておくべき公務員の実情
公務員は安定して働けるだけでなく、定時が決まっていて、まったりと仕事に向き合えるといったイメージを持っている人もいるのではないでしょうか。
これから公務員を目指すのであれば、公務員として働く実情をしっかりと認識しておく必要があります。
ここからは、公務員を目指そうとする大学中退者があらかじめ知っておくべき公務員の仕事の実情について解説します。
民間企業よりも給料が低いことがある
人事院が発表した「令和4年国家公務員給与等実態調査の結果」によれば、国家公務員の平均年収は約677万円となっています。平均月収は41万3,064円であり、そこに賞与が加算されることで平均年収が計算されています。
一見すると高い平均年収だと感じるかもしれませんが、公務員は年功序列で収入が上がっていく仕事です。同じく人事院の調査結果では、公務員の平均年齢は42歳となっていますので、単純に考えると42歳になってようやく677万円の年収水準になります。
公務員として働いていても、20代のうちは平均年収が民間企業よりも低くなることが少なくありません。また、公務員は副業が基本的に禁止されていますので、本業以外で稼ぐことができず、若いうちは低い年収に悩んでしまうといった実情が見られます。
異動が多く専門性は身につきにくい
公務員は特定の業務に特化したスペシャリストよりも、様々な業務に対応できるゼネラリストが求められるような仕事になっています。加えて、組織の空気を入れ替えたり、地域の会社や団体と癒着が起きないようにする目的で頻繁に異動が発生します。
あまりにも異動が多いため、公務員として働いていても専門性が身に付きにくいと感じている若手公務員は少なくありません。
また、部署によって残業時間や業務のきつさが大きく変わってくるといった特徴も見られます。今は問題なく働けていたとしても、異動によって繁忙な部署に配属されることになってしまえば、公務員として働くことに強いストレスを感じる可能性があります。
公務員には3種類ある
一言で公務員といっても、以下の3種類に分けられます。
- 国家公務員
- 地方公務員
- 国際公務員
国家公務員とは、国家機関や行政執行法人などに配属されて働く公務員のことを言います。
国家公務員試験に合格した人だけがなれる公務員であり、スケールの大きい仕事に挑戦できます。
それに対して、地方公務員とは地方機関で働く公務員のことを指します。
市区町村の役所や都道府県省庁などが一般的です。ちなみに、消防官や警察官も地方公務員に分類されます。
国際公務員とは、国際連合を始めとした各国の国際機関に所属して、世界の安全や平和を維持するための仕事に従事する公務員です。
極めて高い知識が求められることもあり、就職するためには原則大学院を修了している必要があります。
したがって、大学を中退している場合は国際公務員になることはできないので注意してください。
大学中退者が公務員になるためのポイント
大学中退者でも公務員になることはできますが、公務員試験の倍率は3倍から8倍程度と言われていますので、入念に対策をしなければ公務員試験に合格することは難しいと考えられます。
大学を中退して公務員を目指すのであれば、以下のポイントを意識して試験対策を進めていきましょう。
- 筆記試験対策に時間をかける
- 面接対策に力を入れる
- 公務員専門スクールに通うのも一つの手
それぞれのポイントについて詳しく解説していきます。
筆記試験対策に時間をかける
大学中退者が公務員を目指そうとするのであれば、まず筆記試験の対策を進める必要があります。
公務員試験の筆記試験は非常に範囲が広く、少し勉強しただけでは合格が難しいのが実態です。
細かい試験項目は各地方自治体によって異なりますが、一般的に1次試験は「教養試験」「専門試験」「論文試験」の3つの筆記試験に合格する必要があります。
それぞれの試験範囲については、以下の通りです。
・教養試験
数的処理 | 高校の数学レベルの試験 |
文章理解 | 現代文と英文読解 |
人文科学 | 高校の地理、歴史レベルの試験 |
自然科学 | 高校の理科と数学レベルの試験 |
社会科学 | 高校の政治・経済や現代社会レベルの試験 |
専門試験
行政系 | 政治学 |
行政学 | |
国際関係 | |
社会政策 | |
経済系 | 経済原論 |
財政学 | |
法律系 | 憲法 |
行政法 | |
民法 | |
刑法 | |
労働法 |
・論文試験
およそ800文字から1200文字の小論文を作成する。出題テーマは、社会課題や自治体との関係性、公務員としてどういう働き方をしたいのかなど様々。
特に教養試験と専門試験については非常に出題範囲が広いといった特徴があります。
高卒程度の試験になりますので、高校3年までのすべての範囲を勉強し直す必要があります。
また、専門試験においては法律を中心として出題されますので、新しく学ばなければならない知識も多いでしょう。
面接対策に力を入れる
公務員試験では、二次試験として面接が実施されることが一般的です。公務員の面接では、民間企業の面接と近い以下のような質問がされます。
- なぜ公務員になりたいと考えているのか
- (地方公務員試験であれば)なぜこの地域で働きたいと考えているのか
- 自己PR
- 今まで頑張ってきたことは何か
- これから取り組みたいと思っている仕事は何か
筆記試験と異なり突飛な質問はされませんが、論理的に回答ができないと落とされてしまいますので、しっかりと対策する必要があります。
公務員は役所に訪れる様々なタイプの人とやりとりをする必要がありますので、高いコミュニケーション能力が求められます。
面接対策では想定質問の回答を準備しておくだけでなく、コミュニケーションを意識してやりとりをする意識を持っておきましょう。
公務員専門スクールに通うのも一つの手
特に公務員試験の筆記試験は、独学で合格するのは難しいと言われるレベルの出題範囲となっていますので、確実に合格を目指したいのであれば、公務員専門のスクールに通うのも1つの選択肢になってきます。
公務員試験は毎年出題傾向や難易度が変わりますので、スクールに通って試験傾向を習得した上で筆記試験に臨んだ方が、合格率を高めることができるでしょう。
大学を中退しているのであれば自由に使える時間が多いはずですので、スクールに通って集中的に勉強に取り組んでみるのもおすすめです。
大学中退から公務員が向いてる人の特徴
公務員は、その仕事の特殊性から向き不向きがはっきりと分かれます。
以下のような特徴を持っている人であれば、大学を中退して公務員になることが向いていると考えられます。
- 安定して働ける職場に就職したい人
- コミュニケーション能力が高い人
- 地域に貢献したいと考えている人
それぞれ詳しく解説します。
安定して働ける職場に就職したい人
公務員として働く大きなメリットの1つに、雇用の安定性が挙げられます。
犯罪を犯さない限り基本的に公務員は雇用が守られているだけでなく、民間企業と異なり倒産をするようなことがないため、定年まで働き続けるような人も少なくありません。
このことから、安定して働ける職場に就職したいと考えている人には、公務員が非常に向いていると言えます。
業務内容としても、現在の社会規模を守るような仕事が中心であり、何かを生み出すような業務は少ないため、仕事が大きく変化するようなことが少ない点も魅力の1つと言えるでしょう。
コミュニケーション能力が高い人
公務員は様々な部署に配属されることになりますが、多くの部署ではその地域に住む居住者と直接やりとりをすることが求められます。そのため、コミュニケーション能力が高い人であれば、仕事を円滑に進めていけるため向いていると言えるでしょう。
公務員に求められるコミュニケーション能力は、聞く力と伝える力の2つです。
その場を面白く盛り上げるようなプレゼンテーション能力は、民間企業よりも求められませんので、複雑な事象でもわかりやすく伝えられるようなコミュニケーション能力が自分にあるか確認してみてください。
地域に貢献したいと考えている人
地方公務員の場合は、仕事の大半がその地域に住んでいる市民のためになる業務となっています。生まれ育った地域や思い出のある地域に貢献したいと考えている人であれば、公務員の仕事に強いやりがいを感じられるでしょう。
民間企業でも地域に貢献することはできますが、どうしても部分的な貢献になってしまいます。公務員であれば地域全体に強い影響を与えられますので、仕事のスケールの大きさも魅力の1つと言えます。
大学中退から公務員に向いてない人の特徴
大学を中退して公務員になることに向いていない人の特徴としては、以下の3点が挙げられます。
- 年功序列ではなく実力主義の職場で働きたい人
- 公務員試験に合格する意欲が低い人
- 仕事にやりがいを求めたい人
これらの特徴に1つでも当てはまる場合、苦労して公務員になったとしても、仕事で大きなストレスを感じることがありますので注意してください。
年功序列ではなく実力主義の職場で働きたい人
公務員は基本的に年功序列で働くことになります。
たとえ仕事で実績を残せたとしても、年齢が若ければ昇給や昇格をすることは難しいのが実態です。
加えて、仕事もトップダウンで降りてくることが中心になっていますので、自分がやりたい仕事に取り組むことは難しくなっています。
実力主義の職場で、自分がやりたい仕事にどんどん挑戦していきたいような熱意のある人や、想像力を活かして今までにないことをやりたいと考えているクリエイティブな人だと、公務員として働く毎日に強いストレスを感じてしまうことが考えられます。
公務員は安定しているといったメリットがある一方で、変化が難しいといったデメリットがあります。
民間企業よりも働き方や教科に大きな制限がありますので、そういった職場に魅力を感じないような人は、公務員を目指すのはやめておいた方が良いかもしれません。
公務員試験に合格する意欲が低い人
先ほど解説した通り、公務員試験は非常に幅が広く、真剣に勉強に向き合わなければ合格することはできません。地方公務員や国家公務員を目指す場合の目安となる勉強時間は、800〜1,200時間程度だと言われています。
大学中退して毎日8時間公務員試験の勉強をしたとしても、100日から150日かかる計算になりますので、公務員になるといった高い意欲を持っている人でなければ、試験そのものに受かることが難しいでしょう。
公務員になる意欲が低いのにもかかわらず、公務員試験の勉強に取り組んでしまうと、なかなか学習を進めることができずに時間だけを無駄に費やしてしまうことがあります。
このことから、勉強が苦手な人は公務員になるのは避けておいた方がいいと考えられます。
仕事にやりがいを求めたい人
公務員の仕事はスケールが大きく、担当する領域においては非常に多くの人の生活に関わるような影響力の高い業務に携わることができます。
しかし、実態として公務員の仕事にやりがいを持っている人は少ないという調査結果があります。合同会社SNAPLACEの調査によれば、同社のサービスを用いて日本のすべての業種の仕事満足度を測定した結果、公務員の仕事満足度はワースト4と発表されています。
もちろん、公務員の中にもやりがいを持って仕事に向き合っている人は少なくありませんが、この調査結果から考えるに、仕事にやりがいを求めたい人は公務員ではなく、民間企業に就職した方が良いと言えるかもしれません。
公務員ではなく民間企業を目指す時のポイント
公務員は安定して働けることや、スケールの大きい仕事に関われるといったメリットがある一方で、公務員試験そのものの難易度が高かったり、公務員になった後もストレスが溜まりやすい環境である可能性を考えると、民間企業を目指したいと感じるかもしれません。
大学中退している人が公務員ではなく民間企業を目指す上では、以下のポイントを意識して就職活動を進めていくことが重要です。
- 大学中退理由をポジティブに伝える
- 就職先に求める条件を言語化する
- 就職エージェントを活用する
なお、公務員試験と民間企業への就職活動を並行することもできます。
もし公務員試験に合格できる自信がないのであれば、上記のポイントを意識して民間企業の就職活動も進めてみることをおすすめします。
大学中退理由をポジティブに伝える
大学を中退している人が面接を受ける場合、高い確率で面接官から「なぜ大学を中退したのか」という理由を聞かれる傾向にあります。これは、面接官が大学中退者に対して「採用した後、本当に長く働く意識があるのか」という懸念を払しょくするために聞いています。
そのため、大学中退理由をポジティブに伝えないと面接官からの印象が悪くなり、面接で落ちてしまうことが考えられます。
また、公務員を目指すために大学を中退したものの、途中で公務員になることを諦めてしまった場合は、公務員になることを諦めた理由もポジティブに伝える必要があります。
例えば「公務員ではなく、民間企業で業務経験を積んで視野を広げたいと考えたから」などの理由だとポジティブな印象を与えられるでしょう。
就職先に求める条件を言語化する
途中まで公務員を目指していたということは、公務員の働き方に対して魅力を感じていたと考えられます。そのため、民間企業を目指すのであれば、公務員と同じような働き方ができる求人を見つけられるようにしましょう。
自分が就職先に求める条件を言語化できれば、求人を比較検討する効率が高まりますので、結果的に就職活動を短期間で終了させることが期待できます。
年間休日や給料といった分かりやすい条件を言語化しておくことはもちろん、どういった仕事内容の会社で働きたいと考えているのか考えるようにしてください。
就職エージェントを活用する
少しでも希望の会社に採用してもらえる可能性を高めたいのであれば、就職エージェントを活用することがおすすめです。
就職エージェントに登録することで、自分専任のアドバイザーが担当につき、就職活動のすべてをサポートしてくれるようになります。
大学中退理由をポジティブに伝える方法はもちろん、就職先に求める条件に合致している求人を紹介してくれますので、スピーディーに内定を目指すことができます。
就職エージェントは様々なサービスが展開されていますが、大学中退者の場合は大学中退者の就職支援実績が豊富な就職エージェントを選ぶことがおすすめです。
若手就職支援に特化したキャリアスタートであれば、大学を中退している人であっても、民間企業への理想の就職を叶えるためのサポートが受けられます。
登録から利用まで全て無料となっていますので、少しでも民間企業への就職を考えている人は、キャリアスタートに相談してみてください。
大学中退から公務員を目指す際の注意点
最後に、大学を中退して公務員を目指す際に注意しておきたいポイントを3つ解説します。
なぜ公務員になりたいのか言語化する
公務員を目指す場合は、自分がなぜ公務員になりたいと考えているのか言語化することが大切です。
言語化によって面接対策になることはもちろん、険しい筆記試験の勉強を進めていくモチベーションを維持するためには、心の底から公務員になりたいと思っている必要があります。
もし公務員になりたい理由がうまく言語化できないのであれば、公務員になる熱意が低いとも捉えられますので、試験勉強が長続きしない可能性も考えられます。
民間企業も併願しておく
公務員試験は基本的に1年に1〜2回しか実施されていませんので、もし落ちてしまった場合は空白期間が長引いてしまうといったリスクがあります。
空白期間が長引いてしまうと、民間企業の正社員になることも難しくなってしまうため、公務員を目指す際はあらかじめ民間企業を併願しておくことがポイントです。
ただ、公務員試験の対策をしながら就職活動を並行するのは時間が足りないこともありますので、就職エージェントを使って効率的に民間企業への就活を進めることがおすすめです。
一人で進路を決めない
公務員は仕事の特性上、向いてる人と向いてない人がはっきりと分かれます。
もし自分が公務員に向いていないことに気づけないまま公務員になってしまうと、ストレスを抱える毎日を過ごしかねません。
特に公務員か民間企業かのどちらに就職するか悩んでいる人は、1人で進路を決めないように注意してください。
自分の進路に迷っている場合は、就職エージェントに相談してみるのも1つの手になりますので、若手就職支援に特化したキャリアスタートに相談してみてください。