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自衛隊を辞めたいと思ったら?辞めにくさの実態と退職の流れ・転職先まで解説

「自衛隊を辞めたいけど…周りで辞めるなんていう人がいなくて言い出しづらい」
「そもそも自衛隊を辞めたあと、どん仕事をしたらいいんだろう」

「自衛隊を辞めたい」と感じていても、実際にどう動けばいいのか分からず、不安なまま時間だけが過ぎていませんか。

訓練のきつさやプライベートの少なさ、人間関係や将来への不安など、退職を考える理由は人それぞれです。

この記事では、自衛隊を辞めたい人によくある理由、自衛隊を辞めるのが難しいと言われる制度上の背景、実際の退職の流れ、辞める前に押さえておきたい注意点を解説します。

後半で自衛隊出身者に人気の転職先にも触れていますので、ぜひ最後までお読みください。

自衛隊を辞めたい人によくある理由

そもそも「自衛隊を辞めたい」人は、何が原因でそう思うのでしょうか?

ここでは、自衛隊をすでに辞めた人の退職理由について紹介します。

  • 体力的にきつい
  • 精身的な負担が大きい
  • 時間外勤務が多い
  • プライベートの時間が取れない
  • 集団生活での人間関係のトラブル
  • 上官や同僚からのパワハラ・いじめ

(1)体力的にきつい

自衛隊を辞める理由に多いのが、体力的なきつさです。

自衛隊では基礎体力向上訓練はもちろん、野営訓練で塹壕を掘るなど特殊な作業を含むような訓練が日常的におこなわれています。

また、有事の際の極限状態に対応するために睡眠時間を削ったり、夜間の見張りの訓練をするなど、不規則な生活想定した訓練もおこなわれます。

このような、一般的な社会人とは異なる体力面での負荷のきつさから、辞めたいと感じる人が多いようです。

(2)精神的な負担が大きい

自衛隊に入隊後の精神的な負担の重さから、退職を決意する人もいます。

日々の厳しい訓練や長時間の勤務に加えて、スマホや外出の制限などで自由時間が取りづらく、常に緊張した環境で過ごすため日常的にストレスの多い環境で過ごすことになります。

加えて、厳しい上下関係の厳しさや災害派遣で悲惨な現場を目にするなど、強いショックを受けるような場面にも遭遇するでしょう。

こうしたストレスが積み重なる一方で「弱音を吐きにくい」「相談ができない」と一人で抱え込んでしまう人も少なくありません。

訓練による身体的なきつさだけでなく、こうした精神的な負担が限界に達し、「このまま続けるのは難しい」と感じて退職を決意する人が多いのが実情です。

(3)時間外勤務が多い

自衛隊では、訓練や警備勤務、行事の準備・後片付け、各種資料作成などで、日課外の時間まで勤務が長引くことがあります。

とくに、演習前後や査察前などは準備に追われ、早朝から夜遅くまで駐屯地に拘束されることも。

また、災害派遣や不測の事態への対応が重なると、予定外の時間外勤務や休日出勤が増え、心身を休める時間が取りづらくなります。

近年は働き方改革の流れのなかで超過勤務時間の上限管理が進められていますが、任務量や人員体制によっては「実際には長時間労働が続いている」と感じる隊員もいるでしょう。

このように、時間外勤務や拘束時間の長さから「このままの働き方を続けるのは難しい」と判断し、退職を考える人もいます。

(4)プライベートの時間が取れない

プライベートの時間が取れないことがストレスになり、辞めたいと感じる人もいます。

自衛隊に入隊すると基本的に独身者は駐屯地内の隊舎に居住し、集団生活を送るのが一般的です。

もちろん仕事が終わったあとは自由時間がありますが、その間に翌日の準備や家事などもするので、フルに遊びに行けるわけではありません。

なお、夜間は門限があるため宿泊なども、決まった休み以外は認められないことが多いです。

このような規則の厳しさから自由がないと感じ、退職を決意する人は多いです。

(5)集団生活での人間関係のトラブル

集団生活における人間関係のトラブルが、退職のきっかけになることもあります。

とくに、自衛隊は民間企業と異なり、上司や同僚と過ごす時間が非常に長いです。

そのため、人間関係に支障があるとそれが仕事のやりづらさに直結してしまいます。

例えば、上官から厳しい叱責を受けたり、同期とコミュニケーションを取らず孤立してしまうと、かなりのストレスになるでしょう。

このような人間関係のトラブルから自衛隊に「いられない」と感じて、辞める人もいます。

(6)上官や同僚からのパワハラ・いじめ

上官や同僚からのパワハラやいじめが原因で、自衛隊を辞めたいと感じる人もいます。

自衛隊は階級や指揮系統がはっきりした組織のため、指導とパワハラの線引きがあいまいになりやすい場面もあります。

大声での叱責が続いたり、人格を否定するような言動、ミスに対する過度な罰的指導などが重なると、心身ともに追い詰められてしまうでしょう。

また、集団生活のなかで特定の隊員だけが仲間外れにされたり、必要な情報を回してもらえないといった「職場いじめ」が起きるケースもあります。

防衛省・自衛隊としてはハラスメント防止の教育や相談窓口の整備が進められていますが、上に言い出せなかったり、トラブルを恐れて泣き寝入りしたりするケースも少なくありません。

結果として、自分を守るために組織を出るという選択を取る人もいる、というのが現状でしょう。

自衛隊を辞めるのはかなり難しい?

そもそも、自衛隊の中では「辞める」こと自体がタブー視されており、周囲の人に気軽に「辞めたい」とも相談できない空気感があります。

「自衛隊を辞めたい」と思いつつも言い出せず、時間が過ぎていってしまう人もいるのが実情です。

また、自衛隊は国家特別公務員であり、退職までの流れが民間とは異なります。

民間企業の正社員であれば、民法627条にもとづき、退職の申し入れから2週間で労働契約を終了できますが、自衛官には自衛隊法などの特別な規定が適用されるため、同じようには退職できません。

自衛隊法40条では退職について、以下のような定めがあります。

第四十条 第三十一条第一項の規定により隊員の退職について権限を有する者は、隊員が退職することを申し出た場合において、これを承認することが自衛隊の任務の遂行に著しい支障を及ぼすと認めるときは、その退職について政令で定める特別の事由がある場合を除いては、任用期間を定めて任用されている陸士長等、海士長等又は空士長等にあつてはその任用期間内において必要な期間、その他の隊員にあつては自衛隊の任務を遂行するため最少限度必要とされる期間その退職を承認しないことができる。

引用:自衛隊法第40条

つまり上官が「今この人に辞められると、任務に支障が出る」と判断すれば、退職を承認しないことができるわけです。

もちろん退職が不可能なわけではありませんが、自分の都合だけで退職する日を決めることはできません。

また、階級や任務の内容、状況によって辞めにくさが変わるなど、通常の組織のように退職が簡単ではないことは理解しておきましょう。

自衛隊を辞める際の流れ

自衛隊の退職はハードルが高いことは説明しましたが、不可能ではありません。

ただし、通常の退職のように退職日の希望を伝えて申請するという単純な流れでないことは理解しておきましょう。

一般的に自衛隊を辞める場合は「陸士・陸曹なら3ヶ月~5ヶ月、幹部なら4ヶ月~9ヶ月」ともいわれるほど時間がかかるため、最低でも退職まで3ヶ月程度は時間を見ておくべきです。

自衛隊を辞める際の流れ
  • 自衛隊法を確認する
  • 辞める時期や辞めたい理由を明確にする
  • 上官に相談する
  • 退職者調書・退職願を作成する
  • 防衛省共済組合の解約・被服や任用一時金の返納
  • 身分証の返還

(1)自衛隊法を確認する

自衛隊を辞めようと思ったらまず、自衛隊法を確認しましょう。

とくに重要なのが、自衛隊法第40条などの「退職・任用期間」に関する条文です。

自衛隊法第40条
  • 退職には任命権者の承認が必要であること
  • 部隊運営や任務遂行に著しい支障が出ると判断された場合、退職時期を先送りされる可能性があること

このようなポイントを自分で一度目を通しておくと、後のやり取りで「そんなルールだったのか」と慌てずに済みます。

あわせて、自分の階級・任用区分も確認しておきましょう。

「いつまでが任期か」「満期退職と依願退職で何が違うのか」を理解しておくと、辞め方の選択肢が整理しやすくなります。

(2)辞める時期や辞めたい理由を明確にする

次に、自衛隊をいつごろ辞めたいのか、辞めたい理由は何かを明確に言語化しましょう。

自衛隊を辞める際は上官数人との面談、そして承認が必要であり、その際にはっきりと退職理由などを説明できないと、相手が納得してくれない可能性があります。

時期についてはざっくりで構わないので、次の任期満了のタイミング、来年中など目安を決めておくのがおすすめです。

理由が曖昧なままだと、引き止めや説得で話が長引き、「結局言い出せなかった」というパターンになる可能性があるので、あなたの中で辞めたい理由をしっかり整理しておきましょう。

(3)上官に相談する

辞める理由などをしっかり固めた後に、上官に退職の相談をします。

いきなり退職願を出すのではなく、退職したい意思や理由、希望する時期について伝えましょう。

なお、自衛隊で退職の申し入れをされると「配置転換してはどうか」など、引き止められるのが一般的です。

しかし、退職の意思が固いのであれば「辞めることは決めてあり、時期と手続きを相談したいです」とはっきり答えましょう。

ここで上官から承認をもらえれば、上級部隊や人事に話をあげてもらえ、具体的な手続きへ進めます。

(4)退職者調書・退職願を作成する

退職の方向性が固まったら、退職者調書や退職願の作成に進みます。

退職調書には退職希望日や理由、退職後の進路予定などを記載するのが一般的です。

作成には人事担当が付き添うことが多いため、指示を受けながら作成すれば問題ありません。

また、公式の書式で退職願を作成し、上官を通じて任命権者への上申が行われます。

自衛隊の場合は退職願を上官から中隊長、連隊長、方面隊など階層を順にして上がっていくため、提出から承認が出るまでにかなり時間がかかります。

(5)防衛省共済組合の解約・被服や任用一時金の返納

退職が近づいてくると、お金や貸与品に関する手続きも発生します。

まず防衛省共済組合の脱退手続きや、自衛隊の被服や一時任用金などがあれば返還手続きをしておきましょう。

その他、備品なども返却が必要なので、上官に確認して漏れの内容に手続きをしてください。

また、隊舎に住んでいる場合は退去の手続きも必要なので、荷造りなどをしておきましょう。

(6)身分証の返還

最後に、自衛官身分証や通行証などの返還を行い、自衛隊員としての身分を正式に離れます。

最終出勤日には、装備などの引き継ぎが完了しているか、書類の不備がないか、隊舎の退去が終わっているかなどを確認し、上官や同僚に挨拶をする流れです。

自衛隊を辞める際の注意点

自衛隊を退職する前に注意点についても事前に把握し、スムーズに辞められるように手続きしましょう。

(1)即日退職はできない

自衛隊は一般の労働基準法が適用されないため、即日退職はできません。

「今月末に辞めます」といったような申し出は承認されないため、時期については目安をざっくり決める程度にとどめましょう。

退職に時間がかかり、その時期にも変動があるため、辞める時期が確定するのはかなり先です。

すぐに辞められるわけではないので、退職後の予定をあまり厳密に決めておくのはおすすめしません。

(2)年収が下がる可能性がある

自衛隊を退職後、民間企業で働き始める際に、同程度の年収が受け取れない可能性があります。

自衛官のお給料について | 防衛省・自衛隊帯広地方協力本部」によると、自衛官の平均年収は民間よりも高くなることが多いです。

以下に、自衛官の平均年収と全国平均年収の差をまとめました。

年代全国平均年収自衛官平均年収
20〜24歳290万円374万円
25〜29歳400万円428万円
30〜34歳415万円440万円
35〜39歳500万円509万円
40〜44歳510万円598万円
45〜49歳521万円677万円
50歳〜540万円715万円

もちろん階級や勤務年数、配属される部隊の手当てによって年収の幅はありますが、今の年収を下回る可能性は否定できません。

さらに、自衛官は無料で居住できる隊舎がありますが、退職すれば当然家を自分で借りて、家賃を払っていく必要があります。

年収が下がり、出費が増えることで生活が苦しくなる可能性があるため、事前に貯金を作っておくなど備えをしておきましょう。

(3)失業保険が受け取れない

自衛官を含む多くの国家公務員は、雇用保険法6条により雇用保険(いわゆる失業保険)の適用対象外とされています。

そのため、一般の会社員のように失業保険を前提にした生活設計はできません。

六 国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業に雇用される者のうち、離職した場合に、他の法令、条例、規則等に基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が、求職者給付及び就職促進給付の内容を超えると認められる者であつて、厚生労働省令で定めるもの

引用:雇用保険法第6条

そのため失業保険をあてはできません。

ただし、自衛隊は失業保険の代わりに「退職手当」が支給されます。

退職手当の金額は勤続年数に応じて変わるため、事前に金額を良く確認しておきましょう。

自衛隊を辞める前に転職先の目星はつけておくのがおすすめ

自衛隊の退職は一般企業と異なり、退職日がいつになるかはっきりわかるまでに時間がかかります。

そのため、在職中に転職活動をしておくのは難しいケースがほとんどです。

しかし、自衛隊を退職すると隊舎から退去し、自分で家賃を払いながら生活していく必要があります。

さらに、自衛隊を辞める際に任用一時金の返還が必要となるなど出費もあるため、できるだけブランクなく働き始められるようにしておくに越したことはありません。

休憩時間などに次の仕事の目星をつけておく、就職エージェントに登録してオンライン相談を受けておくなど対策しておけば、スムーズに転職して民間企業へ移れます。

自衛隊を辞める前にしっかり準備をして、新しい生活へ順応できるようにしておきましょう。

自衛隊を辞めた人に人気の転職先

自衛隊を辞めたあと、どんな仕事に就けば良いかわからない人も少なくありません。

そんな方のために、自衛隊を辞めた人に人気の就職先を5種類紹介します。

  • 警備員
  • 営業職
  • スポーツインストラクター
  • システムエンジニア
  • 自動車整備士

(1)警備員

自衛隊を辞めた人に人気の転職先は警備員です。

施設警備や交通誘導など、現場での安全管理スキルや規律を守る姿勢、また長時間のたち仕事・歩き仕事に耐えられる体力を活かせます。

また、万が一事件や事故が起きた際の危機対応の経験があることも元自衛官の強みです。

実際の警備だけでなく、セキュリティコンサルタントとして活躍する人もいます。

組織的な危機管理、リスク対応のノウハウを活かして事業や民間の防犯、防災対策を提案する仕事です。

なお、警備員の平均年収は約353万円、セキュリティコンサルタントの平均年収は600〜800万円程度です。(参考:施設警備員 – 職業詳細 | 職業情報提供サイト(job tag)

(2)営業職

民間企業の営業職の仕事に就く元自衛官もいます。

自衛官時代に養われた誠実な対応力、報告・連絡・相談の徹底、厳しい訓練に耐え抜いた精神力が、ノルマ達成に活かせます。

また、オフライン営業が主な仕事の場合は足を使う場合も多く、体力があることも強みとしてアピールできるでしょう。

営業職の平均年収は一般的に400万円以上、商社の営業などの場合は618.3万円となっています。(参考:商社営業 – 職業詳細 | 職業情報提供サイト(job tag)

(3)スポーツインストラクター

スポーツインストラクターも元自衛官に人気の仕事です。

高い体力と健康管理、トレーニングの知識を活かして、ジムの会員などにトレーニングや体力作りのアドバイスをおこなえます。

とくに、自衛隊時代に指導の経験がある方は、顧客のモチベーションを維持しつつ指導ができるため人気のあるインストラクターとなり、最終的には独立するなどの将来も描けるでしょう。

なお、スポーツインストラクターの年収は全国平均で438.4万円となっています。(参考:スポーツインストラクター – 職業詳細 | 職業情報提供サイト(job tag)

ただしこれは全国平均であり、雇用されているかどうか、独立かによっても年収は変わります。

(4)システムエンジニア

自衛隊の通信科に所属していた人、通信や情報システムの運用に携わっていた方に人気なのが、システムエンジニアです。

自衛隊出身者のセキュリティ意識や手順を遵守する正確さなどは、IT業界でも重宝されるでしょう。

システムエンジニアの平均年収は574.1万円〜となっており、民間企業でも高額の年収を狙える仕事です。

(参考:システムエンジニア(Webサービス開発) – 職業詳細 | 職業情報提供サイト(job tag)

(5)自動車整備士

隊内で大型車両や特殊車両の整備経験がある場合は、自動車整備士もおすすめです。

自衛隊での自動車整備経験者は、正確な作業や安全管理への意識の高さが評価されやすいです。

自衛隊時代に培った自動車整備の専門技術、資格をそのまま活かせるため、再就職も比較的用意といわれています。

なお年収は513.1万円で、比較的年収も高い仕事といえるでしょう。

(参考:自動車整備士 – 職業詳細 | 職業情報提供サイト(job tag)

自衛隊の次のキャリアを探しているならキャリアスタートへご相談ください

「自衛隊をこのまま続けるのは難しい」と感じるのは、決してあなただけではありません。

ただし、自衛隊は自衛隊法が適用される国家公務員であり、何名もの上官や組織の承認なしには退職ができません。

そのため、退職までには数ヶ月単位の時間がかかるのが一般的で、任務状況によっては時期が調整されることもあります。

自衛隊を本気で辞める決心が固まったら、退職の流れだけでなくその先の人生についても前もってよく考えておきましょう。

体力・規律・技術を活かしやすい転職先の候補も、早めに検討しておくと安心です。

一人で情報収集から企業選びまで進めるのは負担が大きく、在職中は時間も限られます。

自衛隊の次のキャリアを真剣に考えたい方は、第三者のプロに相談しながら、自分に合った働き方を一緒に整理していくことをおすすめします。

自衛隊の次のキャリアを探しているなら、ぜひキャリアスタートへご相談ください。

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