「退職や転職をすると、住民税はどうやって払えばいいの?」
「住民税が前職と現職で二重に請求されたりしない?」
住民税は前年の所得に基づいて課税されるため、退職や転職のタイミングによって「一括で支払うのか」「給与から天引きされるのか」「納付書で自分で払うのか」が変わります。
仕組みを理解していないと、「突然高額の請求が来た」「二重で払ってしまった」などのトラブルにもつながりかねません。
この記事では、退職時期ごとの住民税の扱いから、転職後によくあるトラブルまでわかりやすく解説します。
転職前に知っておくべき住民税の仕組み

多くの方は前の会社で住民税が自動的に天引きされていたので、あまり住民税について意識していないかもしれません。
住民税の意義や決定時期、納付方法について解説します。
(1)住民税の概要と決まる時期
住民税とは、住民票を置いている地域で使われる学校の運営費用やごみ処理などの費用を皆で分担して支払うもので、「市町村民税」と「道府県民税」の2つを合わせて請求されています。
この2つを総称したものが「住民税」で、『均等割』と『所得割』の2つの方法で算出されています。
- 均等割…所得の多い少ないに関係なく一律でかかる税額
- 所得割…前年度の所得に応じて課税される税金
住民税は前年度の年収に基づいて所得割分が計算され、毎月5〜6月に住民税の納付決定通知書が届きます。
なお、住民税はあくまで前年度の年収に基づいて算出されるため、転職後の年収が下がったとしても課税額が直ちに変わるわけではありません。
(2)住民税の納付方法
住民税の納付方法は2つあります。
転職によって住民税の納付方法が変わる可能性があるので、納付方法についても理解を深めておきましょう。
#1:普通徴収
普通徴収とは、市区町村から直接個人に請求書が届き、住民税を納付する方式です。
6月末、8月末、10月末、翌年1月末の年4回が納期限となっており、その分の請求書がまとめて届きます。
請求書が届いたあとは、あなた自身が銀行振込やコンビニ払いなどで、住民税を支払う必要があります。
#2:特別徴収
特別徴収とは、勤務先の会社が給与から住民税を天引きし、代わりに自治体に住民税を納める方式です。
普通徴収の場合は納期限が4回に分かれていますが、特別徴収の場合は6月から翌年5月まで住民税を12分割にして納めることになります。
地方税法の第321条により事業者は特別徴収を義務付けられており、経理の不在などを理由に特別徴収をしないことは認められていません。
ただし、例外的に特別徴収をしなくて良い会社があります。
- 従業員が2名以下である
- 従業員が専属従事者のみである(個人事業主のみ)
例えば、その企業の従業員は2名以下で業務の大半をアウトソーシングしているような場合が、これに該当します。
この条件を満たす企業へ転職する場合は特別徴収がなく、自身で普通徴収が必要になる点に注意しましょう。
転職後の住民税の支払い方

住民税は通常であれば給与から天引きしてもらえますが、転職した場合は支払い方が変わる可能性があります。
(1)転職先が確定している社員の場合
転職先が確定しており、転職までの期間が約1ヶ月程度であれば、特別徴収をそのまま引き継いでもらえるケースが多いです。
転職先の会社に特別徴収ができる旨を確認したうえで、前の会社に「給与所得者移動届出書」を提出してもらえば、市区町村経由で次の会社へ住民税の請求が届くようになります。
前職から市区町村に提出する住民税の引継ぎ書類です。
(2)転職先が確定していない・ブランクがある場合
転職先が決まっていない場合や、退職日と出社日に数ヶ月のブランクがある場合は、普通徴収で住民税を支払う場合があります。
退職時期によって支払い方法が変わるので、注意が必要です。
#1:1月1日から4月30日までの退職
1月1日〜4月末までに退職すると、住民税の支払い方法が少し特殊になります。
住民税は前年の所得に基づいて「6月から翌年5月まで」に分割して支払う仕組みですが、この時期に退職すると残りの支払い期間が短いため、退職月から5月分までの住民税がまとめて精算されます。
具体的には、最後の給与や退職金から一括で天引きされるのが基本です。
ただし金額が大きくて控除しきれない場合は、市区町村から納付書が届き、あなたが自分で振込などで支払う必要があります。
#2:5月中の退職
5月中に退職する場合は前年度の住民税の支払いもほぼ終盤であり、最後の給与から住民税が天引きされて、住民税の支払いは終わりです。
その後は、前年度の収入をもとにした納付書が自宅に届くので、転職先が確定するまでは納付書で住民税を支払いましょう。
#3:6月1日から12月末までの退職
6月1日から12月末までに退職した場合は、翌年5月までの住民税を一括徴収してもらうか、自分で納付書で支払うかを選ぶことになります。
翌年5月までの住民税を一括徴収してもらうか、自分で納付書で払うかを会社から聞かれるので、都合の良い方を選びましょう。
転職後の住民税の支払いでよくあるトラブルと対処法

転職後の住民税の支払いでは、退職のタイミングや処理上のミスでトラブルが起こることがあります。
よくある2つのトラブルと対処法を紹介します。
(1)転職先で住民税が天引きされない
転職先で住民税が天引きされないというトラブルは、意外と起こり得るものです。
これは退職のタイミングで、一時的に普通徴収に切り替わった際によく起きるトラブルです。
例えば、1月に退職して3月に入社した場合に住民税は退職時に一括徴収されているか、普通徴収(納付書払い)に切り替わっています。
そのため、6月までは新しい会社から天引きが始まりません。
また、転職先が特別徴収の対象外の会社である場合も、住民税は天引きされません。
転職先の会社に住民税の天引きが始まらないことを伝えて、手続き等を確認してもらうと良いでしょう。
(2)住民税の天引きが始まっているのに納付書が届いた
住民税の天引きが始まっているのに納付書が届くというトラブルも、転職後によく起こります。
これはよくある誤解や処理のタイムラグによるトラブルです。
市区町村と会社のデータ連携が遅れていたり、転職・退職直後に事務処理のミスが発生していることが原因です。
対処法としては、まず給与明細を確認し、住民税が天引きされているかチェックしたうえで納付書の内容と照らし合わせ、必要に応じて市区町村へ問い合わせましょう。
二重で納付した場合でも、あとから自治体より返金されるため心配はいりません
転職後の住民税についてよくある質問

転職後の住民税についてよくある質問をまとめました。
(1)引越ししていないのに転職後に住民税が上がったように感じるのですが、なぜですか?
住民税は前年の所得をもとに計算されます。
転職後の年収が下がった場合などに、相対的に住民税が高くなったように見えることがあります。
不安な場合は市区町村に問い合わせをして、金額的に問題がないか確認すると良いでしょう。
(2)転職を機に引越しをしましたが、その際に前住所と現住所から二重徴収されることはありませんか?
二重に徴収されることはありません。
住民税は「1月1日時点で住んでいた市区町村」に納めるルールになっているため、転職や引越しをしても、その年の納税先は変わりません。
万が一どちらからも納付書が届いたような場合は、前住所に連絡をして誤って納付書を送っていないか確認しましょう。
(3)住民税の納付書はいつ届くのですか?
普通徴収の場合は、例年5〜6月ごろに納付決定通知書が届き、年4回(6月・8月・10月・翌1月)に分けて住民税を支払っていきます。
なお、住民税の支払い方法はコンビニ払いや銀行振込、引き落としなども選べます。
(4)転職後、住民税の天引きはいつから始まりますか?
新しい会社が特別徴収に対応している場合は、6月以降の給与から天引きが始まるのが一般的です。
ただし、入社時期や会社の事務処理状況によってはスタートが遅れることもあります。
通常は内定後の説明時に住民税の天引きについての説明がありますが、特にない場合は開始時期について質問しましょう。
(5)転職先の会社が特別徴収に対応していない場合はどうしたらいいですか?
転職先の会社が特別徴収の対象外の場合は、普通徴収で納付書払いが必要です。
毎回自分で納付書を使って支払う必要がありますが、口座振替などを設定しておくと払い忘れを防げます。
キャリアスタートなら転職後の住民税の不安も含めて相談可能です!
退職や転職をすると、住民税の支払い方法が普段と変わるケースがあります。
- 1月〜4月退職:残りをまとめて一括精算
- 5月退職:最後の給与で通常通り天引きして終了
- 6月〜12月退職:一括か納付書払いかを選択
転職後は天引きが始まるまで時間がかかったり、納付書が届いたりと混乱する場面もありますが、まずは給与明細と納付書を確認すれば大きなトラブルは防げます。
転職活動と同時に、住民税や社会保険といった生活に直結する制度も理解しておくと心強いです。
キャリアスタートなら、転職に関する相談とあわせて、こうした不安もしっかりフォローが可能ですので、ぜひご相談ください!