さまざまな職種の中でも、向き不向きの差が大きいと言われる「営業職」。ノルマを達成できるかどうかの緊張や、新規営業の難しさ、常に成果を出し続けなければならないことなどがストレスになり、「営業に向いていないのかも」「営業職を辞めたい」と悩む人が数多く存在します。営業職には、具体的にどのような悩みがあるのでしょうか?また、営業職に向いていない人には、どのような特徴が見られるのでしょうか。併せて、営業における苦手意識を克服するコツや、営業の経験を生かして転職する方法などについても、詳しくご紹介したいと思います。
「営業に向いてないと感じる人の主な悩み」
それではまず、「自分は営業に向いていない」と感じる営業マンは、具体的にどのような悩みを抱えているのか見てみましょう。これら5つの項目に共感できる人は、実は営業職であることに大きなストレスを感じているのかもしれません。
ノルマが高く、売り上げの未達成が多い
営業マンが最もストレスを感じるのは、毎月のノルマに対して思うように営業成績をあげられないときでしょう。成績があげられないと売り上げ目標の設定が高すぎると感じ、数字を見ただけでプレッシャーから落ち込むようになります。また、ノルマをなかなか達成できないことで上司や同僚からお荷物扱いをされているのではないかと、常に不安と焦りを感じるようになるのです。こういった気持ちが営業にさらにマイナスの影響を与えるのは、言うまでもありません。
新規営業がつらい
また、新規顧客の開拓は、あらゆる営業マンにとって悩ましい問題です。最初は意欲的に新規営業に挑戦するものの、電話営業や飛び込み営業を断られ続けると、次第にやる気が出なくなっていきます。そして顧客から相手にされないだけならまだしも、強い口調で断られたりクレームを言われたりすることが続くと、新規営業そのものが恐くなってしまいます。そうしたつらい状況が続くと、仕事のことを考えるだけで気が重くなりますし、出社が憂鬱になることもあります。
自社の社風や営業トークに感じる違和感
自分が所属する会社の社風や、営業トークの方法に違和感がある場合も、営業をするのが難しく感じます。たとえば、会社がお客様を十分に大事にしていないケースや、嘘が含まれた営業トークがよしとされる社風など、良心が咎める状況があるかもしれません。特に正直でまじめなタイプの人ほど、そのようなシチュエーションでは、お客さまに商品やサービスをおすすめできないと感じることでしょう。「自分は本当に、顧客のためになる商談をまとめているのだろうか」という疑問や罪悪感から、営業へのモチベーションが低くなってしまい、営業成績の不振などにつながっていくこともあるのです。
実力主義志向についていけない
プロセスより結果のみで評価されるような、実力主義についていけないと感じる営業マンもいます。性格的に競争が好きではない人や、ひとりでこつこつ行う仕事のほうが向いていると感じる人、昇進にさほど興味がない場合などは、営業職にありがちな実力主義志向に嫌気がさす人が多いようです。仕事の過程よりも結果ばかりが評価されることに不満を感じていると、やはり仕事全般に対してやる気が出なくなっていきます。
営業としてやっていく自信がない
他にも、根本的に営業職をやっていく自信がない人もいます。お客さまや上司から「営業に向いてない」と言われ、自分で振り返ってみても「向いてない」と感じることが多々ある場合、「自分には営業はできない」と一気に自信の喪失につながってしまいます。自信のなさは相手にも伝わり、契約を取ることも難しくなっていくでしょう。そうなってしまうと「自分は営業マンとして失格だ」という無力感から、会社に行くのもつらい状態になってしまうこともあるのです。
「営業に向いてない考え方の特徴」
このように「自分は営業に向いていないのではないか」と悩む理由はたくさんありますが、では実際に営業職に向いていない人にはどのような特徴があるのでしょうか?ここで、営業の適性が低いと考えられる9つの傾向を見てみましょう。
他人とのコミュニケーションが苦手
人とのコミュニケーション能力が低い人は、営業に向いていないと言えるかもしれません。人見知りの人は営業以前に、初対面の人と会うことや会話すること自体をストレスに感じるでしょう。しかし、お客さまの前で緊張してしまい、自社の商品やサービスの強みをうまく話せないと営業が成立しません。人付き合いが苦手な人は、営業職を苦手と感じることが多いでしょう。
プライドが高い
プライドが高く、上司など他人からのアドバイスを素直に受け入れられないタイプにとっても、営業はストレスになります。まず、プライドが高い人は完璧主義者のため、失敗したり、結果が出なかったりすると心が折れやすいのが特徴です。
そして、基本的に営業はお客さまに購入をお願いする立場です。そのため、人当たりよく低姿勢であるほうが交渉をスムーズに行うことができます。自分の気持ちが邪魔して、人に対してへりくだることができないタイプにとっては、成績を上げるためにそれ以上の高度な営業スキルが必要となってくるでしょう。
主体的に動けない
自ら考えて動くことができず、指示されたことだけを遂行するタイプの人は、お客さまに商品やサービスを売り込むのは難しいといえます。というのも、提案型の営業などでは、お客さまに合わせた提案が必要となってくるからです。そのためには、主体的に考え、行動し、お客さまの心をつかむことが求められます。こうしたスキルがなく指示待ちに徹してしまうタイプの人は、営業の場で臨機応変な対応をすることが困難でしょう。
向上心がない
向上心がなく、自省することができない人も、営業に向いているとは言えません。営業のできる人は、契約が取れなかった際は、契約できなかった原因を考えて改善しているものです。また、契約前にもシミュレーションなど事前準備を怠りません。そしてお客さまの業界に対しても勉強熱心でなければ、お客さまの悩みを知ることができないのです。このように、営業として成長し続けていくためには向上心を持つことがとても大切なのです。
スケジュール管理が苦手
スケジュール管理が苦手な人にとって、営業職の仕事はストレスが大きいでしょう。営業は、自らのスケジュールを自分で管理しながら仕事をしていかなければなりません。スケジュール管理が苦手な人は、お客さまへのレスポンスも遅れがちになります。これでは、良いイメージを与えるのが難しくなってしまうでしょう。
また、営業は移動が多く、お客さまや社内との連携が必要なため、スケジュール管理や時間配分が重要です。スケジュールが遅れないように逆算して動くことが苦手だと、お客さまとの大事なアポイントに遅れてしまうだけでなく、信用を失うことにもなりかねません。営業は約束事の連続であることを考えると、そのマネジメント能力がないことは営業職にとって大きな問題です。
清潔感がない
見た目の清潔感に欠けることも、営業職にとっては非常にマイナスです。営業にとって第一印象は重要です。身だしなみを整えられない人は、お客さまに不快感を与えかねず、そうなると信頼を得るのは難しいでしょう。清潔感がないということは、お客さま目線になることができていないという評価にもつながる可能性があるため、人と多く接する営業職にとっては特に致命的なのです。
打たれ弱い
繊細で打たれ弱いタイプも、営業にはあまり向いていません。ノルマなど数字のプレッシャーに押しつぶされやすい人は、成績をあげることがより困難になるからです。また、どんなに一生懸命でも、物事にはミスや失敗はつきものです。特に営業を行う上で、断られることに慣れておらず、引きずりやすい性格だと、気持ちを切り替えて次へ進むことができにくくなってしまいます。
性格が良すぎる
気が優しく、性格が良すぎる人は、営業トークをストレスと感じる人が多いようです。お客さまの理不尽な言動に傷つくことや、無理な注文や要望、値下げ要求をはっきり断れない人もいます。また、売り上げを上げたい上司とお客さまの間で板挟みになりやすく、どちらのメリットのために動けばいいのか悩むこともあるでしょう。人間関係の悩みを抱えやすい人にとっては、営業は最適な職種とは言い難いのです。
自信がない
自信に欠けることも、営業をする上では大きなハンデになります。自信のなさは、話し方や挙動に現れます。そんな自信のない人を見ると、周りは「この人に任せても大丈夫だろうか」と心配になり、お客さまや社内からも信頼を得にくくなるのです。特にお客さまにとって、自信のない営業は不安を感じやすく、契約に至らないことが多いものです。そうなると、営業成績のノルマを達成できないという負のスパイラルにおちいっていくことにもなりかねません。
「営業の苦手意識を克服するコツ」
それでは、営業が苦手で向いていないと感じている人は、どのように状況を理解し、改善していけばいいのでしょうか。営業の苦手意識を克服するコツについて、具体的に見てみましょう。
自分が営業に向いてないという思い込みをなくしてみる
まず大切なのは、「自分は営業に向いていない」という思い込みをなくし、自分に自信を持つことです。たとえば先ほど述べた営業に向いてない人の特徴は、あくまで一般論にすぎないと考えてみましょう。特徴の中には、努力で改善可能なものもあります。現に、「昔は口下手だった」など、苦手なことを克服してトップセールスマンになっている人も多いものです。
何事も、最初から得意な人はいません。例えば、スポーツだって遊びだって、最初は下手で、何度も何度も練習し、失敗しながら経験を重ねてだんだん上手になるものです。もし、最初の頃に「向いているか向いていないか」を決めるとしたら向いてないのかもしれませんし、逆に練習して上手になってから決めるとしたら「向いている」になるのではないでしょうか。何事も前向きに、継続していくことも大切です。そこに「続ける理由」「続けたい気持ち」があるならば。
営業を苦手だと悩んでいる人は、自分が何に苦手意識を感じているか原因を洗い出し、改善できるか考えてみましょう。例をあげると、他人とのコミュニケーションが苦手で緊張する人は、場数を踏むなどの対策ができます。どうすれば自分が営業向きの人間になれるのか、同僚や上司など、周囲の人に相談してみるのも良いでしょう。
成功者の行動を真似てみる
なかなか自信が持てない人、苦手意識が抜けない人は、まず形から入ってみるのもひとつの手です。社内など同じ職場の営業で結果を出している人の行動から学び、その行動を真似てみましょう。営業に絶対的な答えはありませんが、成功者は自分に合ったスタイルを確立できている人が多く、参考にできる点はたくさんあります。成功者のやり方を研究し、良いところは積極的に取り入れ、その上で自分に合った営業スタイルを模索していきましょう
「やっぱり営業に向いてないと感じたときの対処法」
しかし、どれほど努力してみても、「やっぱり自分は営業には向いていない」と感じることもあるでしょう。そんなときは、営業職のストレスと戦い続けるよりも他の解決策をとる方が、結果として仕事の成果をあげられることもあります。どうしても営業がつらくなったときは、このような対処法を取ってみると良いでしょう。
社内で他部署への異動希望を出すことを検討する
営業としてどうしてもやっていけないと感じたときは、社内の他部署へ異動させてもらうことを考えてみましょう。どんな仕事にも適性があります。頑張り続けて体を壊すよりは、無理せず他部署へ異動する方がずっと建設的です。所属している部署の上司に、まず相談に乗ってもらうことからはじめてはどうでしょうか。同時に異動希望先の現状も把握し、機会を待ちましょう。その間も、仕事をおろそかにするなど、現在の部署に迷惑をかけないようにすることが大切です。
転職を検討してみる
社内で他部署への異動が難しい場合は、思い切って転職を検討してみるというのも手です。転職には、別ジャンルの営業へ転職する方法と、営業以外のほかの職種へ転職する方法があります。
転職する・しないの境目
現在の社風や営業スタイルが合わないと感じる場合、転職する・しないの境目を判断するのを難しく感じることもあるでしょう。
たとえば飛び込み営業などが苦手な人は、これは営業のキャリア形成のための必須項目であり、営業として成長するための勉強だという意識を持って挑むようにすることがおすすめです。確かに、ルート営業、インバウンド営業など、飛び込み以外にも営業の方法はたくさんあります。そのように新規開拓型ではない営業形態をとっている会社もありますが、それはほんの一握りであり、営業としての経験が浅い場合は採用してもらうことが難しくなるでしょう。新規営業は全ての営業の基本です。営業として経験を積めば、ステップアップが狙えることを理解し、努力できるよう考え方を変えてみることが役立つかもしれません。
それとは別に、お客様への対応不十分な社風や、奨励される営業トークの傾向に違和感があることが原因の場合、どうしても良心が咎める際は、他の業種や企業の営業を検討してみると良いでしょう。会社が変われば、社内の空気や営業スタイルも大きく変わります。そして本当にお客様のためになっているという実感が得られれば、また営業への情熱を取り戻せる可能性があります。
ほかの職種への転職
そして、どうしても営業がつらいと思うときは、無理せず他の職種への転職を検討しましょう。一生懸命努力しても、それでも営業に向いてないと思うなら、辞めてもいいのです。その場合は、自分が営業に不向きだっただけと考えるように心がけましょう。無理して営業にこだわらず、体調を崩す前に行動を起こすことが大切です。
営業の経験は、店舗系や、IT系、技術系の仕事などほかの職業でも十分に生かすことができます。たとえば人と協力してプロジェクトを進めるスキル、コミュニケーションスキル、提案などは、どんな職種にも共通して必要となるスキルです。営業を経験したことは、決して無駄にはなりません。営業で学んだことは、転職先で違った形で生かせばいいのです。自信を持って転職活動にのぞみましょう。
「営業の経験を活かして他職種に転職するには」
それでは最後に、営業の経験を生かして多職種へ転職する方法について、詳しく見てみましょう。転職活動には、どのような方法があるのでしょうか?また、どのような点をチェックしながら転職活動を行っていけばいいのでしょうか?
転職サイトや求人情報サイトを利用する
転職活動の際は、まず転職サイトや求人情報サイトを利用してみましょう。
このようなサイトを使った転職活動は、自分のペースで、空いた時間に簡単に行うことができるのが最大のメリットです。自分で希望する職種や勤務地、希望年収など給料面の条件を入れて詳しく調べることができます。基本的に利用料は無料なのも、ありがたいポイントです。興味のある企業を複数ピックアップし、気になった企業は口コミサイトなどを使って調べてみるのも良いでしょう。
このように、自主的に転職活動を行うことができる人、自分のペースで転職先を探したい人であれば、転職サイトや求人情報サイトがおすすめです。
転職エージェントを利用する
また、転職エージェントを利用すると、スムーズに転職活動を行うことができます。転職エージェントサービスに登録すると、担当者がついて就職活動のサポートをしてくれるのです。こちらも転職サイトと同様に、利用料は無料です。
転職エージェントを利用する最大のメリットは、自己分析では気づかない客観的な分析をしてもらえるという点です。適性診断やさまざまな質問などを通じて、自分にはどのような職種や業種が向いているのかアドバイスしてくれるところもあります。たとえば「マルチタスクは苦手だが一人でコツコツこなす専門職は向いている」など、自分では気づかなかった長所を教えてもらうことができるのです。
そして転職エージェントでは、転職活動の実務的な面もサポートしてもらえます。履歴書の添削や面接対策もしてもらえるのが心強いです。また、非公開の求人情報もあり、そういった有益な情報を紹介してもらえるのも大きなメリットと言えます。
転職エージェントの中には、第二新卒向けに特化したものもあります。社会人経験が浅いからこそ、プロのサポートが心強いものです。転職エージェントを利用する際には、それぞれの得意分野をチェックし、自分に最も合った転職エージェントを選ぶようにしてみましょう。
「営業職以外にも、あなたに合う仕事はきっとある」
今、「営業がつらい」と感じている人、「自分には営業は向いていない」と悩んでいる人にとっては、仕事に行くのもおっくうで、働くことが大きな苦痛になってしまっていることでしょう。営業で成功している人たちを見て、「どうして自分にはあんな風にできないのだろう」とプレッシャーを感じ、自信をなくして落ち込んでしまうこともあるかもしれません。
一生懸命努力を重ねても、なかなか成果につながらないとき、それはあなたが悪いのではなく、もしかすると頑張る場所を間違えているだけという可能性もあります。どのような職業にも、向き不向きはあります。もちろん営業力も例外ではなく、営業に向いていない人がそこで結果を出そうと奮闘するよりも、自分に合った職場に移動する方が何倍もの成果をあげられることもあるのです。
もちろん転職にはリスクもありますが、そのまま現在の職場で無理をして体を壊してしまっては元も子もありません。そうなる前に手を打ち、自分に適した仕事で活躍することが、自らのためだけでなく、周りのためにもなるのです。営業職以外にも、あなたにぴったりの仕事はきっと見つかります。どうか変化を恐れず、現状を変えるために挑戦してみてください。