大学中退する事は親不孝なのではないかと不安に感じてしまい、どうすればいいか分からなくなっている人も多いことでしょう。
大学を中退する事は、親の期待を裏切ったり、今までの学費を無駄にするといった観点から親不孝だと言われがちです。
しかし、親への伝え方に注意をすれば、単に親不孝で終わらせるだけでなく、新しい一歩を踏み出すきっかけにすることも可能です。
この記事では、大学を中退することが親不幸だと言われる理由に加えて、大学中退の選択を親不孝にしないためにやっておくべきことについて解説します。
就職活動の進め方について知りたい人は以下の記事も参考にしつつ、中退後のことも考えていきましょう。
大学中退が親不孝と言われる理由
大学を中退することが親不孝だと言われる理由としては、以下の3点が挙げられます。
- 親の期待を裏切ることになるから
- 中退までの学費が無駄になるから
- 就職が難しくなるから
特に、大学の受験費用や学費を親に出してもらっている人や、特に理由もなく大学を中退したいと考えている人については、これらの理由をしっかりと認識しておいてください。
親の期待を裏切ることになるから
大学を中退することで、それまで親が自分に向けてくれていた期待や応援を裏切ることになります。
間接的にはなりますが、親に対して大きな悲しみを与えかねない決断になることもあり、大学中退は親不孝だと言われています。
人によっては、自分の子供を大学まで卒業させることを人生の目標としているような親も少なくありません。ただ、そういった目標は親として子供にわざわざ直接口にする事は少ないでしょう。
大学を中退してしまうと、親の密かな願いを踏みにじることにも繋がりかねません。
親は子供の幸せや成長を本能的に願っている存在のため、大学中退の事実が親に対して「自分の育て方が間違っていたのではないか」などと感じさせてしまうこともあります。
中退までの学費が無駄になるから
大学を中退することにより、事実上それまで大学に費やしていた学費や入学費が全て無駄になってしまいます。
金銭的な理由で考えても、大学中退は親不孝な選択であると言えるでしょう。
大学の学費は国公立か私立かによって大きく変わってきます。
文部科学省の「国公私立大学の授業料等の推移」によれば、令和3年のそれぞれの大学の入学料と年間の授業料は以下の通りです。
【入学料】
- 国立大学:282,000円
- 公立大学:391,305円
- 私立大学:245,951円
【年間の授業料】
- 国立大学:535,800円
- 公立大学:536,363円
- 私立大学:930,943円
私立大学に至っては、入学初年度でおよそ120万円の金銭的負担がかかっていることがわかります。
もし大学3年生で大学を中退する場合、私立大学の計算でおよそ300万円のお金を無駄にしてしまうことになります。
これに加えて、大学受験のために進学塾に通っていた場合は、塾の費用も中退によって無駄になってしまいます。
親が汗水をかいて稼いだ多額のお金を一瞬にして無駄になるため、ご両親と丁寧に話し合うことが大切です。
就職が難しくなるから
大学を中退すると、大学を卒業するよりも正社員就職を実現できる可能性が大幅に下がります。
厚生労働省の「令和4年3月大学等卒業者の就職状況」と、文部科学省の「令和4年3月高等学校卒業予定者の就職内定状況に関する調査について」の調査結果をまとめると、大卒と高卒の就職率には以下のような差があることが分かります。
- 大卒の就職率:95.8%
- 高卒の就職率:75.1%(高校卒業後、就職希望者に対する就職内定者の割合)
大学を中退することで学歴上は高卒となりますので、大学を卒業する時よりも約20%就職できる可能性が低くなってしまう計算になります。
多くの親は、自分の子供が大学を卒業し、正社員として社会に出て働いてほしいと思っているものです。
ただ、大学を中退すると就職率が大きく下がってしまいますので、結果的にフリーターとして実家で生活し続けることが考えられ、親にやるせない気持ちを感じさせてしまうかもしれません。
大学中退によって生じる親不孝以外のデメリット
大学を中退することは、親不孝という観点だけでなく、以下のようなデメリットも生じます。
- 最終学歴が高卒になり将来の選択肢が減る
- 将来の面接で毎回大学中退理由を聞かれる
- 新卒として就職活動ができない
このように、大学中退は複数のデメリットがある選択になります。
これから大学の中退を考えている人は一度立ち止まり、本当に自分は中退していいのかを真剣に考えることをおすすめします。
ここでは、大学中退によって生じる親不孝以外のデメリットを解説します。
最終学歴が高卒になり将来の選択肢が減る
大学を中退した時点で学歴は高卒になります。
履歴書においては大学に入学した事実は書けるものの、同時に大学を中退したことを記載しなければならないため、高卒であることは面接官に必ず伝わってしまいます。
学歴が高卒になると、応募できる求人の選択肢が大きく減ることになります。
求人には、応募条件として「大卒以上の学歴であること」と明記されているケースが少なくありません。大学を中退して高卒になった人は、大卒以上を募集する求人に必然的に就職できなくなるのです。
もし将来、就職や転職などでどうしても行きたい会社が見つかったとしても、その会社が大卒のみを募集していた場合、どう頑張っても就職することができません。
このように、将来の選択肢が減ってしまうことは、大学を中退する上で大きなリスクとして認識しておく必要があるでしょう。
将来の面接で毎回大学中退理由を聞かれる
先ほども解説した通り、大学を中退した事実は履歴書で記載する必要があります。
そのため、今後発生する様々な面接の場において、「なぜ大学を中退してしまったのか」という理由を複数回聞かれることになります。
大学の中退理由は、答える内容によって面接官の心証を大きく下げることもあります。
面接の都度、大学中退理由を準備しなければならないため、就活対策に時間がかかったり、余計な不安を感じながら就活を進めなければならないといったデメリットも考えられます。
新卒として就職活動ができない
大学を中退した時点で、新卒枠としての就職活動はできなくなります。
新卒枠とは新卒カードとも言われ、大学を始めとした学校を卒業したと同時に就職する人を募集する枠のことを言います。
新卒枠で就活をすることには、以下のようなメリットがあります。
- 新卒採用の枠でしか就職できない企業がある
- ポテンシャルのみで有名企業や大企業に就職できる
- 周囲の友人と同じスピードで就活を進められるため安心感がある
- 就職後の研修などのサポートが豊富
このようなメリットを全て享受できなくなるため、大学中退者の就活が厳しいものになることが考えられます。
親に反対されない大学中退の伝え方
大学中退が親不孝だと理解していたとしても、勉強についていけなかったり、人間関係に悩んでしまったりなどでどうしても中退の選択を取りたい人がいるかもしれません。
その場合、以下のようなポイントを意識した上で、親に反対されないような伝え方を心がけてみてください。
- なぜ中退したいのか分かりやすく伝える
- 大学中退後の具体的なビジョンを伝える
- 感謝と申し訳ないという気持ちも伝える
- 支払ってもらっていた学費の返済についても触れる
それぞれ詳しく解説します。
なぜ中退したいのか分かりやすく伝える
大学を中退したい旨を親に伝える際は、いきなり大学を中退する。もしくは大学を中退したいということだけを話すのではなく、「なぜ大学を中退したいと考えているのか」を分かりやすく伝えることを意識してください。
大学を中退するという結論だけ先に話してしまうと、親からすれば「自分の期待を裏切られた」という感情や、「今までのお金を無駄にされた」というネガティブな思いが強くなってしまい、喧嘩に発展することも考えられます。
「大学でこういうことに悩んでいて、こういった解決策を取ろうと頑張ってみたものの、どうしてもうまくいかず悩みに悩んだ結果、大学を中退したいと考えている」といった、大学中退理由とセットで親に伝えることを意識しましょう。
大学中退後の具体的なビジョンを伝える
親は子供の将来を常に考えている生き物のため、大学を中退した後はどうやって生きていこうと考えているのか、高い確率で聞かれる傾向にあります。
大学中退を親不孝にしないためには、将来の不安を安心させてあげる必要があります。
そのためにも、大学を中退した後はどういった未来を歩もうとしているのか、具体的なビジョンをセットで伝えましょう。
この時、できるだけ親を安心させる材料を盛り込むことが大切です。
まずはフリーターとして働こうとしているのであれば、「◯年間フリーターをしながら就職先を探し、◯歳までに正社員として就職したいと考えている」など、具体的な期日とともにビジョンを伝えることがポイントです。
感謝と申し訳ないという気持ちも伝える
大学を中退する理由が具体的で、なおかつ将来のビジョンがしっかり持てていたとしても、親からすれば自分の子供が大学を中退することは悲しいと感じるものです。
親を悲しい思いにさせるだけでも親不孝となってしまうことから、今まで自分を育ててくれた感謝と、中退をしようとしている事実を申し訳ないと思っていることを合わせて伝えましょう。
感謝と申し訳なさを親にしっかりと伝えることで、真剣に考えた結果大学を中退しようとしていることを理解してもらえるはずです。
支払ってもらっていた学費の返済についても触れる
大学の入学費や学費を親に支払ってもらっていた場合、支払ってもらっていた学費をどうしようと考えているのか触れるようにしてください。
自分で働いて返す場合は、いつからいつまでの間にお金を渡すのかを伝えましょう。
もし学費の支払いに自信がない場合は、その不安を親に正直に伝えることも重要になってきます。
また、大学進学にあたって奨学金を借りている場合は、大学中退したとしても奨学金の返済が始まります。
奨学金の返済を自分がするのか、親に立て替えてもらいたいと考えているのかは、このタイミングで合わせて確認しておくことをおすすめします。
親不孝にしない!大学中退前にやっておくべきこと
何も考えずに大学を中退してしまうと、フリーターとして生活せざるを得なくなるだけでなく、親元で生活をせざるを得ない状況になり、さらに親不孝に繋がることも考えられます。
大学中退を親不孝にしないためにも、以下のようなアクションを中退前に必ず取り組んでおきましょう。
- 本当に中退しないといけないか再度検討する
- 自己分析を行っておく
- 正社員就職について調べておく
これらの行動を大学中退前にやっておけるかどうかによって、親だけでなく自分の将来も大きく変わります。
それぞれ詳しく解説します。
本当に中退しないといけないか再度検討する
大学を中退したいと考えたら1歩踏みとどまって、本当に大学を中退しなければならないのかを自問自答するように心がけましょう。
既に解説した通り、大学の中退は親不孝になるだけでなく、正社員として就職が難しくなったり、選択肢が狭まったりするなど自分の人生に少なからず大きな影響を与えます。
どうしても勉強についていけず、卒業できる見込みがないという状況であれば中退も選択肢になってくるかもしれませんが、以下のような理由で中退したいと考えているのであれば、中退をせず解決できないか試してみるのもおすすめです。
- サークルの人間関係が自分に合わない:サークルを辞める/別のサークルに入る
- 単位がうまく取れない:友達と協力をして取りやすい単位の講義を選ぶ
- 学費を払うお金がない:大学特有の奨学金制度を調べてみる/割の良いアルバイトを探す/親に学費を工面してもらえないか相談する
- 学びたい勉強ができない:大学に通いつつ社会人向けのセミナーに通う/独学で興味のある勉強に取り組む
このように、大学の中退を考える大抵の理由は、自分の努力や考え方を変えることによって解決が可能です。
安易に中退を選ぶのではなく、今の状況をどうやって打開するかを考えることが大切です。
自己分析を行っておく
どうしても大学中退をしないと今の状況を解決できないと判断するのであれば、中退前に自己分析を行っておきましょう。
自己分析とは、今までの経験を棚卸しして自分がどういった人間なのかをより深く理解するための分析のことを言います。
大学を中退するか悩んでいる人であれば、「なぜ中退をしたいと考えているのか」を深堀るだけでなく、「どうして大学を中退したいと思う状況になってしまったのか」という過去も思い出すことがポイントです。
ここで自己分析を行っておけると、将来正社員就職を目指す際に大学中退理由を納得感持って話せるようになるため、結果的に就活対策にも繋がります。
正社員就職について調べておく
大学を中退した後、フリーターとしての空白期間が長引けば長引くほど正社員就職が難しくなります。
そのため、できるだけ早く正社員就職を叶えるためにも、大学中退前に正社員就職の方法について調べておきましょう。
大学を中退する前であれば大学の設備をフル活用することができますので、キャリアセンターに用意されている就活対策の本や問題集を読み漁っておくことや、先輩に就活のノウハウを教わっておくことも良いでしょう。
もし大学に行くことそのものが嫌になってしまっている場合は、大学中退者の就職支援に強いキャリアスタートに相談してみてください。
在学中であっても、就職支援のプロのアドバイザーが就職活動の流れや具体的に向いている仕事を紹介することが可能です。
会員登録後はオンラインでアドバイザーと面談をすることもできますので、大学やバイトで忙しい人でも、好きな場所から就職活動のやり方を教わることができます。
大学中退者におすすめの仕事
大学を中退した人には以下の仕事がおすすめできます。
- 営業職
- ITエンジニア
- 販売職
それぞれ平均年収や向いている人の特徴についてもまとめますので、気になる仕事があったら中退前に求人を比較検討してみてください。
営業職
会社や個人に対して商品を提案し、契約を取ってくる仕事です。
未経験者を募集する求人が多いだけでなく、就職後は学歴にかかわらず契約実績で評価をしてもらえます。
そのため、大学中退者であってもコミュニケーション能力が高ければ、高い年収を狙っていける点がおすすめできる理由です。
また、営業経験を活かして別の職種にキャリアチェンジすることも可能なため、「正社員になりたいものの興味のある仕事がない」という人にこそおすすめできます。
平均年収 | 620万円 |
大学中退者におすすめできる理由 | ・学歴不問、未経験歓迎の求人が多い・大学の専門的な知識が不要で、コミュニケーション能力があれば活躍できる |
向いている人の特徴 | ・コミュニケーション能力が高く、伝えるべきことをわかりやすく伝えられる人・目標を達成する思考が強い人 |
平均年収出典:厚生労働省「営業(IT) – 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))」
ITエンジニア
ITシステムやサービスを開発するにあたって、設計書や要件定義書を作成したり、設計書に基づいてプログラミングを行う仕事です。
技術力や開発実績がとにかく重要視される仕事であり、学歴や職歴は就職の際にそこまで重視されません。
したがって、学歴不問で募集されている求人が多い点がおすすめポイントです。
ただし、ITエンジニアとして就職した後は日々IT知識やプログラミング技術を勉強し続けなければなりません。
勉強についていけないからという理由で大学を中退する人の場合、ITエンジニアとして働き続ける事は難しいかもしれませんので注意が必要です。
平均年収 | 684万円 |
大学中退者におすすめできる理由 | ・実力主義の社会であり、学歴に関係なく技術があれば活躍していける |
向いている人の特徴 | ・論理的に物事を考える力に優れている人・就職後に技術の勉強を続けられる人 |
平均年収出典:厚生労働省「システムエンジニア(基盤システム) – 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))」
販売職
アパレルショップや家電量販店などの店舗に勤め、来店客に対して適切な接客を行う仕事です。
営業職と同じく、学歴不問・未経験者歓迎といった求人が非常に多く、就職しやすい点がおすすめできるポイントです。
また、大学時代にショップ店員などのアルバイト経験がある人は、その経験を正社員としてそのまま活かすことができるため、就職後に活躍しやすいといったメリットもあります。
販売職として就職した後は、店長やスーパーバイザー、エリアマネージャーなどのマネジメントポジションを目指すことも可能です。
コミュニケーション能力に自信がある大学中退者は、販売職を目指すのも良いでしょう。
平均年収 | 361万円 |
大学中退者におすすめできる理由 | ・学歴不問、未経験歓迎の求人が多い・高卒も多く働いている |
向いている人の特徴 | ・あらゆる人と円滑にコミュニケーションが取れる人・販売や接客に関わるアルバイト経験がある人 |
平均年収出典:厚生労働省「電器店店員 – 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))」
よくある質問
最後に、大学中退と親の関係においてよくある質問を2つ取り上げて解説します。
大学中退は親にバレる?
親に黙って大学を中退する事は基本的にできません。
なぜなら、ほとんどの大学の退学届には保証人の署名・捺印欄が用意されており、保護者の了承が必要になっているからです。
もし退学届に親の署名と捺印が不要な様式であったとしても、何気ない会話で大学を中退していることが親にバレてしまうこともありますので、親に隠れて中退をしようとは思わないようにしてください。
大学中退した時の親の気持ちは?
大学を中退した時、自分の親が感じる気持ちとしては以下のようなものが挙げられます。
- 今までかけてきた学費が無駄になってしまった
- 子供の将来が心配で仕事が手につかない
- 自分の育て方が悪かったのではないかと自責の念に駆られる
- 近所や親族からの世間体が気になる
- やるせない気持ちで腹が立つ
親と子の関係性にもよりますが、基本的にはネガティブな気持ちを持たれる可能性が極めて高いと考えられます。
そのため、大学を中退しようとするときは、親のことを第一に考えた発言を意識するとともに、自分の将来を自分でしっかり考えていることを伝えることが、親不孝にならないために大切なことになってきます。
まとめ
大学を中退することは、多くの場合で親不孝になります。
それだけでなく、応募先の選択肢が大幅に狭まったり、新卒として就活ができなくなったりなど、自分の将来にとっても不幸なことが生じるリスクが考えられます。
そのため、大学を中退しない方法がないか考え尽くしてみることを大事にしてください。
それでも中退の道を歩むのであれば、就職エージェントに相談して、出来る限り早く正社員として就職できるよう行動することも意識しましょう。