高卒者の就職事情|メリット・デメリットとポイント、主な進路とは?
平成29年3月の高卒向け求人数は、6年連続で増加し、大卒向け求人の約1.3倍である38万7千人もの求人がありました。また平成30年度に高校を卒業する人で、就職希望者は約17.7%の187,715名で、そのうち約98.1%が実際に就職しています。では、そのように高卒の求人が伸びる中で、高校卒業後に大学などに進学してから就職するのと、高卒で就職するのではどちらがよいのでしょうか。高卒で就職する際の主な進路や、高卒で就職することによるメリットやデメリットについて紹介します。
高卒者の就職状況
高卒者の就職状況は、文部科学省の「平成30年3月高等学校卒業者の就職状況(平成30年3月末現在)に関する調査について」によってデータとしてまとめられています。
高卒者の就職率【全体】
平成30年度に、全国の高校を卒業する人は1,061,494人で、そのうち就職希望者が187,715人でした。そして実際に就職した人は184,094人で、就職希望者の約98.1%が就職していることになります。
高卒者の就職率【学科・地域別】
就職希望者数のうち、実際に就職した人数の割合を就職率と言い、この数値は高校の学科や、高校がある地域によって違いがあります。
学科別の就職率
高校での学科別の就職率は、工業科、商業科、福祉科、農業科などの学科で99%を超え高い就職率を確保しています。これらの学科のある高校では、就職率が高いことが求められ、その数値で入学希望者に影響があるため、授業に就職で必要なスキルを習得するためのカリキュラムを組んだり、進路指導に力をとても力を入れている高校もあります。
学科別では、普通科の就職率が96.3%と最も低くなっていますが、これは普通科では就職よりも進学に対する進路指導などの支援が強い傾向にあることや、就職に必要なスキルを学ぶ機会がないことが影響していると考えられます。
地域別の就職率
都道府県別に見ても、就職率には差があり、就職率の高い県は、富山県(99.9%)、福井県(99.8%)、石川県(99.7%)、鳥取県(99.6%)などで、就職率の低い県は、沖縄県(93.7%)、大阪府(94.9%)、神奈川県(95.5%)、東京都(95.9%)などとなっています。
これは、その地域の進学率や高卒に対するの求人数などが影響していると考えられます。
【参考】
「平成30年3月高等学校卒業者の就職状況(平成30年3月末現在)に関する調査について」(文部科学省)
http://urx2.nu/WroH
高卒で就職するメリット・デメリット
一般的には大卒者の方が就職や生涯に稼げるお金(生涯賃金)において有利といわれています。では、高卒で就職することにメリットなないのでしょうか?またデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。それぞれみてみましょう。
高卒で就職するメリット
高卒で就職する最大のメリットとしては、同年代で大学や短大、専門学校に進学する人と比べて、早くから社会人経験を積むことができることです。いち早く社会人のマナーや専門的なスキルを身に付けられることができ、同級生が大卒で就職する時には、すでに社会人としての4年間のリードがあります。人によってはスキルアップして管理職になっているケースも少なくありません。
また、早いうちから自分の力で稼ぐことができることに加え、大学や専門学校に通うための学費がかからないことから、家庭の生活費の負担を減らしたり家計を助けたり、経済的な自立もを目指すことも可能です。
デメリット
高卒で就職をする際のデメリットとしては、大卒以上に限定して募集をするなど学歴制限を設けている企業や、高卒者を採用をしていても正社員ではないなどの条件がつく企業がることです。特にその傾向は、大手企業ほど大きく、高卒で大企業に就職するのはかなり難しい状況となっています。そのため、希望する企業や職種に応募できない可能も考えられます。なかには学歴が待遇に影響しない企業もありますが、多くの企業では、同じ年齢の大卒者と高卒者とでは給与や待遇に差があるようです。
厚生労働省の平成29年賃金構造基本統計調査結果によれば、大卒男性の平均賃金は39.8万円で、高卒男性の場合は29万円となっています。特に男性では50~54歳の区分で約18万円の賃金の差があるなど大卒と高卒では大きな所得格差があります。これを生涯賃金で計算すると、男性大卒で2億4000万前後、高卒は2億円前後となり、大卒の方が高卒より4000万円ほど多っているようです。
高卒者の主な就職先
募集される職種には、大卒者と高卒者では多少違いがあるようです。高卒者の主な就職先と職種を紹介します。
販売業
販売業は、スーパーやアパレルショップ、雑貨屋などで商品の販売を担当する職種です。お客さまに満足いただくための接客をするために、コミュニケーション能力が必要となります。また販売業では、商品の発注や在庫管理など、数値を管理する仕事もあるため、計算能力も身に付けておくと仕事に役立ちます。
飲食業
飲食業界は、居酒屋やレストランなどの店舗で業務を行う職種です。本部ではなく、店舗での勤務であれば大卒者、高卒者に関係なく募集されることが多くあります。店頭候補として採用されることがほとんどで、経験を積むことでホールスタッフのリーダーや店長、料理長などキャリアステップをすることができ、フランチャイズとして独立やのれん分けなどを厚生福利として制度化している企業もあります
建設業
建設業の中では、現場の職人が多く求人が出ています。主に男性の就職先となりますが、将来的に独立起業を目指すこともできます。仕事の内容は専門的なものが多いですが、体を使う仕事が中心で、体力に自信がある人に向いている職種と言えます。また、実際に勤めている人のほとんどが高卒以下のため、学歴に関係なく活躍することができます。
介護スタッフ
少子高齢化により介護業界の人材不足は深刻で、高卒にも多くの求人がみられます。実務経験を重ねた上で、資格を取得することも可能で、高卒でもスキルアップを目指すことができます。資格の取得を目指すだけでなく、通常の業務としても健康や医療に関する知識が求められることから、学ぶ意欲が高い人におすすめの職種です。また、介護では体力も必要となります。
公務員
公務員には、大卒以上でないと受けることができないものもありますが、高卒でも警察官や消防官などは応募可能です。しかし、どの職種の公務員であっても公務員試験に合格することが必要になるので、ある程度の学力が求められます。
プログラマー
プログラマーは、知識や経験が必要な職種ですが、逆に知識や経験があれば学歴に関係なく活躍することができます。IT業界は技術進歩が非常に早く、常に最新の知識を身につける必要があり、自分での勉強が欠かせません。最近では、特にプログラマーなどIT系エンジニアの需要が高く、転職によって収入や待遇のよい企業への就職も狙うことが可能です。
高卒者が就職するときのポイント
高卒で就職や転職を目指す場合、次のポイントを気をつけるとよいでしょう。
応募前に自己分析を行う
高卒者に限ったことではないですが、希望する職種や企業を決める前には、自己分析を行うことが大切です。自分が持っている資格やスキルなどの強みを把握することで、自分がマッチする業界や職種を見つけやすくなります。また、併せて学業や部活動の成果なども振り返っておくと、履歴書を記入する際や面接で必ず質問される自己PRを考えるときの参考になります。自己分析の方法や進め方については、高校の進路指導の先生やキャリアカウンセラーにアドバイスをもらうとよいでしょう。
応募前に企業研究を行う
応募する企業が決まったら、その企業の研究を行い事業内容や企業理念などの情報を調べて理解しましょう。履歴書や面接では志望動機がとても重要になっています。応募する企業で自分がしたい仕事や、入社することで企業に貢献できることをまとめておくと、面接の際に面接官に伝えやすくなります。
就職支援サービスを活用する
高卒者の就職や転職には、さまざまな就職支援サービスを利用することができます。主なサービスとしては、ハローワークや転職エージェントがあり、いずれも専門家のサポートを受けることができ、難易度の高い求人先でも、応募が進めやすくなる可能性があります。また、一般の求人サイトには載っていないような、非公開の求人を紹介してくれる可能性もあります。
冒頭で、高卒の求人数が増加していると紹介しましたが、これは高校卒業後、4月から新卒社員として採用を希望する数です。高卒後にフリーターとして働いていた場合や、正社員で働いていたけど転職したい人に向けた求人は、それほど多くありません。そのような場合には、特に転職エージェントなどを利用して専門家のアドレスを受けることをおすすめします。
学歴だけではない!高卒で就職してもキャリアアップはできる
一般的に高卒と大卒では生涯賃金に大きな開きがあるというデータがありますが、ひとくちに大卒といっても国立大や有名私立大を卒業して大企業に就職するのと、大卒後に中小企業に就職した場合では初任給やその後の昇給に違いがあるようです。大卒でなくとも高卒からキャリアを磨いた方が将来的に活躍できるケースもあります。また、職種によっては、学歴よりも実力で評価され早くに管理職になるなど高卒でも早くキャリアアップする可能はあります。高卒で就職や転職を目指す際にはハローワークや転職エージェントの専門家に相談するとよいでしょう。
一般的に高卒と大卒では生涯賃金に大きな開きがあるというデータがありますが、ひとくちに大卒といっても国立大や有名私立大を卒業して大企業に就職するのと、大卒後に中小企業に就職した場合では初任給やその後の昇給に違いがあるようです。大卒でなくとも高卒からキャリアを磨いた方が将来的に活躍できるケースもあります。また、職種によっては、学歴よりも実力で評価され早くに管理職になるなど高卒でも早くキャリアアップする可能はあります。高卒で就職や転職を目指す際にはハローワークや転職エージェントの専門家に相談するとよいでしょう。