正社員を1週間で辞めても失業手当は受けられる?雇用保険(失業保険)の受給条件は?
「正社員で就職して1週間しか経っていないけど、辞めたい…」
「正社員を1週間で辞めても雇用保険の”失業手当”は貰えるのかな」
このようなお悩みはありませんか?
勤務先や家庭などの外部事情やご自身の事情などから、どうしても仕事を続けるのが難しく、1週間で会社を辞めざるを得ない人は少なくありません。
ここでは、正社員を1週間で辞める人が一番気になる、雇用保険のひとつの「失業手当」について、受給を受けるための条件、受給金額や受給期間などをわかりやすく解説します。
記事の最後には、受給するための申請の流れや、そのほか社会保険の支払などについての注意点も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
なお、以下の記事では、正社員を早期退職し転職する場合の注意点などについて詳しく解説しているので、こちらもぜひ参考にしてください。
Contents
1.失業手当(失業保険)とは雇用保険の基本手当のこと
失業手当(失業保険)とは、雇用保険制度によって受けられる給付の一つです。
被保険者の方が、定年、倒産、契約期間の満了等により離職した場合に、再就職の支援として支給されるものです。
雇用保険は、政府が管掌する強制保険制度であり、労働者を雇用する事業は原則として必ず加入する必要があり、雇用されている人は社会保険として加入しています。
しかし、失業手当(失業保険)を受給するためには一定の条件があり、また、給付を希望する場合は自分で申請する必要があります。
2.1週間で辞めても失業手当を受け取ることができる場合がある
失業手当(失業保険)を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 失業状態である
- 雇用保険の被保険者期間が6か月または1年以上ある(離職理由によって異なる)
- 空白期間が1年以内である
雇用保険の被保険者期間について、空白期間が1年以内の場合は、以前の加入期間も通算できます。
そのため、すぐに退職した場合、通常では被保険者期間の条件を満たすことはできませんが、離職1年以内の以前の会社で加入していたのであれば、今の企業をすぐに辞めても失業給付を受けることが可能です。
例えば、「以前の会社で1年以上勤務した後、離職期間が1年以内に転職して、1週間で退職」の場合でも、雇用保険の被保険者期間に以前の会社の1年以上を合計することができます。
一方で、「以前の会社で1年以上勤務した後、離職期間が1年超に転職して、1週間で退職」の場合、雇用保険の被保険者期間に以前の会社の1年以上を合計することはできません。
※被保険者期間の換算は、「賃金支払いの対象となる勤務日数が11日以上ある月」、または「賃金の支払いの対象となる勤務時間数が80時間以上ある月」を1カ月として数えるため、正確には、以前の会社のみとなります。
3.失業手当(失業保険)の受給要件
前章のように失業保険を受けるためには、以下の受給要件を満たすことが必要です。
- 失業状態である
- 雇用保険の被保険者期間が一定期間以上ある
引用元:基本手当について|ハローワークインターネットサービス
ここでは、各条件について詳しく説明します。
(1)失業状態である
「失業状態」とは、就職しようとする意思と、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず職業に就けず、積極的に求職活動を行っている状態を指します。
したがって、雇用保険の被保険者であっても、次のようなケースは失業状態とは認められず、失業手当(失業保険)を受け取れない場合があります。
- 病気やけがのため、すぐには就職できないとき
- 妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できないとき
- 定年などで退職して、しばらく休養しようと思っているとき
- 結婚などにより家事に専念し、すぐに就職することができないとき
ただし、病気、けが、妊娠、出産、育児等の理由で働くことができない場合でも、ハローワークに「失業給付金の受給期間延長手続き」を行えば、働ける環境が整ったあとで給付を受けることができます。
そのため、上記の失業状態ではない場合でも、まずは住所又は居所を管轄するハローワークに相談することをおすすめします。
(2)雇用保険の被保険者期間が一定期間以上ある
失業手当(失業保険)の受給には、離職理由によって、必要となる雇用保険の被保険者期間が異なります。
離職理由 | 必要な被保険者期間 |
「一般受給資格者」の場合 | 退職の日以前2年間、通算して12か月以上 |
「特定受給資格者」、「特定理由離職者」の場合 | 退職日以前の1年間、通算して6か月以上 |
失業した人がどちらに該当するかは一般的には以下となっています。
ただし、どちらに該当するかの最終判断は、居住地を管轄する公共職業安定所などが事業主と離職者双方の主張を勘案したうえで判定します。
一般受給資格者 | 「特定受給資格者」や「特定理由離職者」等に該当せず、前章の条件を満たした失業状態の人を指します。 |
特定受給資格者 | 会社都合(倒産や解雇など)の理由により、再就職の準備をする時間的な余裕がなく、離職を余儀なくされた人を指します。 |
特定理由離職者(会社都合) | 当人が契約更新を希望しているにもかかわらず、期間の定めのある労働契約が更新されなかったことにより離職した人を指します。 |
特定理由離職者(自己都合) | 「正当な理由」のある自己都合により離職した人を指します。
※詳細は「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要|ハローワークインターネットサービス」を確認ください。 |
4.失業手当(失業保険)の受給期間
前章の条件を満たす場合、「所定給付日数」を限度として定められた受給期間、失業手当(失業保険)の支給を受けられます。
所定給付日数や受給開始の時期は、「離職理由」、「被保険者期間」によって異なります。
それぞれのケースをみていきましょう。
(1)一般資格受給者、特定理由離職者(自己都合)の場合
雇用保険の被保険者期間によって、最大5か月分(150日)の支給を受けることができます。
雇用保険の被保険者期間 | 受給期間 |
10年未満 | 90日 |
10年以上20年未満 | 120日 |
20年以上 | 150日 |
また、基本手当の支給の開始は、「7日間の待期期間+2カ月間※(または3か月)の給付制限期間」を経て、受給資格決定日から最短で約2カ月後となっています。
失業等給付の制度が改正され、令和2年(2020年)10月1日以後は給付制限期間が3か月から2か月へ短縮されました。
ただし、以下の場合は、3カ月間の給付制限が適用されます。
- 令和2年(2020年)9月30日以前に自己都合で離職している場合
- 自己の責めに帰すべき重大な理由による退職の場合
(2)特定受給資格者、特定理由離職者(会社都合)の場合
受給期間は、「雇用保険の被保険者期間」と「離職時の年齢」によって異なります。
30歳未満の場合、最大6か月分(180日)の支給を受けることができます。
雇用保険の被保険者期間 | 離職時の年齢 | ||||
30歳未満 | 30歳以上
35歳未満 |
35歳以上
45歳未満 |
45歳以上
60歳未満 |
60歳以上
65歳未満 |
|
1年未満 | 90日 | ||||
1年以上
5年未満 |
90日 | 120日 | 150日 | 180日 | 150日 |
5年以上
10年未満 |
120日 | 180日 | 240日 | 180日 | |
10年以上
20年未満 |
180日 | 210日 | 240日 | 270日 | 210日 |
20年以上 | – | 240日 | 270日 | 330日 | 240日 |
また、基本手当の支給の開始は、2か月(または3か月)の給付制限期間がなく、7日間の待機期間を終えたらすぐに受け取りを始めることが可能です。
5.失業手当(失業保険)の金額計算方法
失業保険の受給額は「基本手当日額×給付日数」で決まります。
給付率は離職時の年齢と元の賃金によって異なり、金額が低い方ほど値は高くなります。
基本手当日額 | 原則、退職前6カ月の賃金(ボーナスを除く)の総額を180で割った「賃金日額」に、およそ50~80%の給付率を掛けた金額です。 |
給付日数 | 待機期間が過ぎた1日目から認定日までの期間分が初回に支給されます。
初回に支給されて2回目からは、原則28日分ずつ支給され、所定給付日数になるまで支給されます。 |
基本手当日額は以下のように上限と下限が設けられています。
例えば、「離職時の年齢が29歳以下の場合」は、以下の給付額となります。
賃金日額 | 給付率 | 基本手当日額 |
2,746円以上 5,110円未満 | 80% | 2,196円~4,087円 |
5,110円以上 12,580円以下 | 80%~50% | 4,088円~6,290円 |
12,580円超 13,890円以下 | 50% | 6,290 円~6,945 円 |
13,890円(上限額)超 | ー | 6,945 円(上限額) |
引用元:雇用保険の基本手当日額が変更になります~令和5 年8 月 1 日から~│厚生労働省
このように失業保険の受給額は高くはないため、生活が苦しくなってしまう人は少なくありません。
そのため、早期退職の前に、早期退職後のプランも検討することをおすすめします。
なお、以下の記事では、正社員を早期退職し転職する場合の注意点などについて詳しく解説しているので、こちらもぜひ参考にしてください。
6.失業手当(失業保険)を受給するまでの流れ
基本的な流れは上の図のとおりです。
それぞれ詳しく解説します。
(1)以前の勤務先から証明書を受け取る
まずは、以前の勤務先から「雇用保険被保険者証」と「離職票(雇用保険被保険者離職票)」を受け取りましょう。
離職票(雇用保険被保険者離職票) | 離職したことを証明する公的な書類です。
以前の勤務先から退職後に貰うものであり、郵送の場合、一般的には1か月程度で離職者本人の手元に届きます。 |
雇用保険被保険者証 | 雇用保険に加入していることを証明する書類です。
入社のタイミングまたは、退職時に企業から渡されます。 「雇用保険被保険者証」が手元になく、以前の勤務先に連絡するのが億劫なときは、本人確認書類と印鑑があれば、ハローワークで再発行も可能です。 |
(2)ハローワークで求職申し込みを実施
住居を管轄するハローワークに行き、「求職の申込み」を行ったのち、書類を提出して「受給資格の決定」を受けます。
ここで受給要件を満たしていることや、離職理由の判定などが行われます。
- 求職申込書
- 雇用保険被保険者証
- 雇用保険被保険者離職票(-1、2)
- 証明写真2枚(最近の写真、正面上三分身、縦3.0cm×横2.4cm)※ 個人番号カード(マイナンバーカード)を提示することで省略が可能です。
- 本人名義の普通預金通帳またはキャッシュカード(一部指定できない金融機関があります)
- 身元(実在)確認書類(運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど)
- 個人番号確認書類(マイナンバーカード、通知カード、個人番号の記載のある住民票のいずれか1種類)
(3)受給者初回説明会に参加
ハローワークが実施する「雇用保険受給者初回説明会」に参加します。
この説明会へは必ず参加する必要があり、参加したら初回の失業認定日が知らされます。
(4)求職活動と失業の認定を行う
初回の失業認定日までに求職活動を行い、認定日当日にハローワークで求職活動の報告をして、失業状態にあることの認定を受けます。
手当は、失業の認定を行った日から通常5営業日で振り込まれます。
(5)2回目以降の給付の流れ
その後は4週間ごとにハローワークへ行き、失業認定を行いましょう。
1回目の失業認定以降は、原則として、4週間に1度、失業の認定(失業状態にあることの確認)を行います。
指定された日に管轄のハローワークに行き、「失業認定申告書」に求職活動の状況等を記入し、「雇用保険受給資格者証」とともに提出するなどの手続きを行います。
なお、離職理由によっては、待期期間満了後2か月間は基本手当が支給されないため、支給日などを事前に窓口で確認しましょう。
7.1週間で退職した場合、社会保険の支払いはどうなる?
入社してすぐ退職をした場合、「保険料の支払いはどうなるのか」と気になっているかと思います。
社会保険料の支払いについて、「健康保険」と「厚生年金保険」ではそれぞれ異なります。
それぞれの種類に分けて解説していきます。
(1)健康保険
健康保険は、入社してすぐ退職したとしても、月単位で計算されるため、加入した1か月分の社会保険料が発生します。
そのため、勤務した日数が少ない場合は、給与より保険料の方が高くなることもあり、不足している場合は会社から差額分を請求される可能性もあります。
なお、退職後、再就職をするまでの期間も、国民保険などで健康保険に加入する必要がある点も注意しましょう。
(2)厚生年金保険料
退職した月に納めた厚生年金保険料は、一般的に戻ってくることがほとんどです。
たとえば、退職した同月に別の会社に再就職した場合、新しい勤務先の分と合わせて二重で支払うことになるため、以前の勤務先から銀行口座への振込などを通して、被保険者へ返ってきます。
入社してすぐ退職した場合は、会社と返金のやり取りがスムーズにできるようにしておきましょう。
まとめ
本記事では、正社員を1週間で辞めた場合の雇用保険、特に失業手当(失業保険)について、受給の条件や金額、申請方法などを紹介しました。
雇用保険は一日でも早い再就職を支援する目的として支給されており、辞めた後もスムーズに生活を続けることができるよう、活用することをおすすめします。
ただし、失業手当の金額は勤務時の50~80%となってしまい、生活が苦しくなってしまうことも少なくないです。
そういったリスクも考え、退職する前に今よりも収入面や勤怠面等で好条件を目指せる企業に転職することも視野に入れましょう。
若手に特化した転職エージェントに相談することがおすすめです。