正社員なのに退職金なしは普通?3つのメリットと今からできる対処法
「正社員なのに退職金なしなのは違法じゃないの?」
「退職金がない会社で正社員になる意味はあるのかな」
このような疑問はありませんか?
そこで、本記事では退職金がない会社の割合や支給額など、退職金に関する情報をわかりやすく解説します。
また、退職金なしの会社で正社員になるメリットや、入社した会社が退職金なしだった場合の対処法も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
Contents
1.正社員なのに退職金なしでも違法ではない
退職金は会社に支払いが義務づけられているものではなく、福利厚生の一つです。
退職金を支給するか否か、または支給する場合でもどのような基準で支給するかについては、会社が自由に決められます。
そのため、会社が退職金制度を設けていなくても法律上の問題はありません。
ただし、労働契約書、就業規則、退職金規程などで退職金支給の条件を明確にして支払いを約束している場合は、社員に退職金を受け取る権利が発生します。
よって、会社に退職金制度があり、社員が支給条件を満たしているにもかかわらず、退職金が支払われない場合は違法となります。
この場合は退職金の請求ができるので、自身で会社に交渉するか、労働基準監督署や弁護士に相談しましょう。
(1)退職金なしの会社は25%存在する
「令和5年就労条件総合調査の概況」によると、退職給付制度がある企業割合は74.9%でした。
つまり、退職金制度が設けられていない会社は25%存在するのです。
4社に1社は退職金制度自体がないと考えると、退職金なしの会社はそれほどめずらしくないといえるでしょう。
(2)退職金なしの会社の割合は規模や業種によって異なる
退職金のない会社の割合は規模によって異なります。
以下は「令和5年就労条件総合調査の概況」をもとに作成した企業規模別の退職金制度がある企業割合です。
企業規模(社員数) | 退職金制度がある企業の割合 |
1,000人以上 | 90.1% |
300~999人 | 88.8% |
100~299人 | 84.7% |
30~99人 | 70.1% |
上記のデータから、会社の規模が小さくなるほど退職金制度のある割合が減っており、1,000人以上の会社と100人未満の会社では割合に20%もの差があることがわかります。
また、同調査 では、会社の業態によっても退職金制度がある割合が異なる結果が出ました。
退職金制度を設けている割合が特に低い業種は、宿泊業・飲食サービス業(42.2%)と生活関連サービス業・娯楽業(68.5%)で平均を大きく下回っています。
反対に、複合サービス事業や鉱業・採石業・砂利採取業、電気・ガス・熱供給・水道業 では96%以上もの企業が退職金制度を導入しています。
このことから、入社する会社の規模と業種によって、退職金がもらえない可能性は大きく変わるといえるでしょう。
2.退職金の支給額は年々減少している
退職金の給付額は年々少なくなっています。
以下は、「就労条件総合調査」のデータから作成した年別の退職金の平均支給額です。
【勤続20年以上・45歳以上の定年退職者の平均退職金額】
調査年 | 全体平均 | 大学・大学院卒 | 高校卒 (管理・事務・技術職) |
高校卒 (現業職) |
令和5年 | 1,587万円 | 1,896 万円 | 1,682 万円 | 1,183 万円 |
平成30年 | 1,586万円 | 1,983万円 | 1,618万円 | 1,159万円 |
平成25年 | 1,580万円 | 1,941万円 | 1,673万円 | 1,128万円 |
平成20年 | 1,984万円 | 2,323万円 | 2,062万円 | 1,569万円 |
平成15年 | 2,002万円 | 2,499万円 | 2,161万円 | 1,347万円 |
上記のデータから、退職金の平均支給額は約20年間で500万円近く減少していることがわかります。
今退職金制度がある会社で働いていても実際に退職金を受け取る頃には、さらに退職金が少なくなっている可能性があるのです。
そのため、老後の資金は退職金を当てにしすぎず、今から準備を始めておく必要があります。
3.退職金制度があっても支給されないケースがある
退職金制度を導入している会社であっても、退職者が退職金を受け取る条件を満たしていない場合は支給されません。
退職金の支給要件は会社によって異なりますが、勤続年数が短いことから支給対象から外れてしまうケースは多々あります。
一般的には、3年以上勤めた場合に退職金を支給する会社が多いようですが、中には勤続5年、10年が支給要件になっている会社も存在します。
退職金支給の条件は会社によって異なるので、今勤めている会社の就業規則や退職金規定をチェックしてみましょう。
4.退職金なしの会社で正社員になる3つのメリット
「退職金なしなのに正社員で働く意味はあるのかな」と感じる人は少なくありませんが、退職金なしがメリットになることもあります。
退職金なしのメリットは、以下の3つです。
順に解説します。
(1)年収が高い可能性がある
退職金制度を取り入れている会社は、社員に支払う退職金を確保するために積み立てを行っています。
一方で退職金なしの会社は退職金の積み立てが不要になるため、月給や賞与が高く設定されていることがあります。
収入が多ければ貯金や資産運用のお金を確保できるので、若いうちから資産形成しやすいでしょう。
また、前述のとおり、「〇年勤めなければ退職金を受け取れない」と支給要件を定めている会社は少なくありません。
退職金なしの場合は「転職したいけど退職金を受け取るためにあと1年働かないと…」と縛られることがなく、自分のタイミングで転職ができる点もメリットといえるでしょう。
(2)資金計画を立てやすい
退職金なしのメリットとしては、資金計画が立てやすいこともあげられます。
退職金の額は年々少なくなっており、退職金制度があっても自分が想定していた金額をそのまま受け取れるとは限りません。
また、退職金規定で「会社の業績に応じて払う」と定めている会社も多くあり、その場合は業績悪化によって退職金がカットされてしまう可能性もゼロではないのです。
一方で退職金がない場合は、最初から退職金を当てにせず確実に資金を準備する計画を立てやすくなります。
(3)退職金受け取りの手続きが不要
退職金受取の手続きが不要になることも、退職金なしのメリットです。
退職金には所得税がかかるので、支払いすぎた税金を払い戻してもらうためには、確定申告をする必要があります。
一時的な手続きですが、確定申告をしたことのない人にとっては負担に感じるでしょう。
ただし、「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出すれば、適正な退職所得の額と所得税額が計算されて源泉徴収が行われるため、退職金受給による確定申告は不要になります。
5.退職金なしでも今からできる対処法4選
前述のとおり退職金なしの会社で働くことにもメリットはありますが、退職後の生活を考えると早めに資金の準備をしておく必要があります。
退職金がない会社で働いている正社員の対処法を以下4つ紹介します。
順に説明します。
(1)老後に使えるお金を増やす
退職金なしでも安定した生活を送るためには、今から退職後に使えるお金を増やすことを意識しましょう。
老後資金を増やしていくには、基本的なことですが、まずは貯金を心がけることが大切です。
先取り貯金をしたり、節約をして使わなかった分の生活費は繰り越さず口座に入れたり、簡単には引き出せない口座を作ることで確実に老後資金を形成できます。
また、個人年金への加入もおすすめです。
毎月保険料を支払う必要がありますが、支給開始時期になれば一定期間または終身にわたって年金を受け取れます。
満期になったら一括で受け取る契約も可能なので、退職金代わりにまとまったお金がほしい人は利用したいサービスです。
(2)資産運用をする
老後の資金を準備するためには、貯めるだけでなく増やすことも重要です。
代表的な資産運用を以下5つ紹介します。
投資方法 | 概要 | 特徴 |
株式 | 企業が発行した株式を購入してリターンをねらう運用方法 |
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債権 | 国・地方公共団体・企業などが発券した債権を購入して利息を得る運用方法 |
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投資信託 | 専門家に資産運用してもらって利益を出す運用方法 |
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外貨預金 | 日本円を外国の通貨に変えて預金し、金利を得る運用方法 |
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不動産投資 | 建物や土地を購入して家賃収入を得る運用方法 |
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資産運用ではリスクを理解した上で、投資できる額や資産運用に使える時間、どのくらいのリスクを負ってどのくらいのリターンを目指すかなど、自分の状況に合わせた運用方法を選ぶことが大切です。
(3)収入の柱を増やす
本業以外の収入源を作ることで、月々の貯金や資産運用に使えるお金を増やすことも老後に備える方法です。
働きながら始めやすい副業は、以下があげられます。
副業 | 具体的な仕事例 | 特徴 |
単発や日雇いのアルバイト |
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クラウドソーシングを活用した副業 |
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コンテンツ販売 |
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副業は、収入が増えるだけでなく会社以外の人脈ができたり、自身のスキルアップにつながったりするメリットもあります。
ただし、今勤めている会社が副業を許可しているかどうかは、就業規則などで必ず確認しましょう。
正社員がダブルワークをするときの注意点は、以下の記事を参照ください。
(4)退職金制度を導入している会社に転職する
「給与が少ないから貯金や資産運用はできない」「やっぱり退職金がないと不安」という人は、退職金制度がある会社へ転職するのも一つの選択肢です。
退職金制度の有無は求人票に記載されているので、「退職金あり」の会社に絞った転職活動はできます。
もちろん、退職金の有無だけではなく、労働条件や仕事内容、会社の企業理念などは必ずチェックしましょう。
退職金制度を導入している会社の多くが勤続年数を支給要件にしているので、「長く勤められるか」という点は非常に重要になるためです。
今よりも長く安心して働ける会社をお探しの方は、若手に特化した転職エージェントのキャリアスタートにお任せください。
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長期的なキャリアプランや人生設計を考慮した転職活動の相談も大歓迎なので、ぜひご利用ください。
良い転職エージェントの見つけ方やおすすめの転職エージェントは以下の記事で紹介しています。
まとめ
会社には退職金の支払い義務がないため、正社員に退職金を支給しなくても違法にはなりません。
実際に、日本の会社の4社に1社は退職金制度がない状況です。
退職金を設けていない会社で働くメリットもありますが、今から老後に使えるお金を準備し始める必要はあります。
退職後の生活に強い不安を感じる場合や資産運用・貯蓄に回せるほどの給与をもらっていない場合は、退職金制度を導入している会社への転職を検討しましょう。