職業訓練校(ハロトレ)とは?制度内容からメリット・デメリットまで徹底解説!
「職業訓練校ってどんなところ?」
「ハロトレを受けるメリットやデメリットを知りたい」
このような疑問はありませんか?
職業訓練校で受けられるハロトレとは、ハロートレーニングの略称で仕事に必要な知識やスキルが習得できる公的な職業訓練制度です。
ハロトレは、未経験の分野でも1から学べるなどのメリットがある一方で、人気の高い訓練は選考で落ちることがあるといったデメリットもあります。
この記事では、職業訓練(ハロトレ)の活用を検討している方に向けて、制度の概要や訓練内容、受講するメリット・デメリット、受講するまでの流れを詳しく解説します。
ハロトレに興味のある方やハロトレを受けるか迷っている方は、ぜひご一読ください。
Contents
1.職業訓練校(ハロトレ)とは?
職業訓練(ハロトレ)とは、希望する仕事に必要な知識やスキルを身に付けられる公的な制度で、年間約26万人が活用しています。
ハロトレには、主に失業保険を受給している求職者を対象とする「公共職業訓練」と、主に失業保険を受給できない求職者を対象とする「求職者支援訓練」があります。
(1)公共職業訓練
公共職業訓練とは、スキルアップを通じて再就職やキャリアアップを目指すための制度です。
公共職業訓練には、離職者向け・在職者向け・学卒者向け・障がい者向けの訓練があり、各訓練には以下の特徴があります。
訓練の種類 | 対象者 | 受講料 | 訓練期間 | 実施機関 |
離職者向け | ハローワークの求職者で主に雇用保険受給者 | 無料(テキスト代等は自己負担) | おおむね3か月~2年 | ・国(ポリテクセンター) ・都道府県(職業能力開発校) ・民間教育訓練機関等(都道府県からの委託) |
在職者向け | 主に中小企業の在職者 | 有料 | おおむね2日~5日 | ・国(ポリテクセンター・ポリテクカレッジ) ・都道府県(職業能力開発校) |
学卒者向け | 高等学校卒業者等 | 有料 | 1年または2年 | ・国(ポリテクカレッジ) ・都道府県(職業能力開発校) |
障がい者向け | 障がいを持っているハローワークの求職者 | 無料 | おおむね3か月~1年 | ・国(障害者職業能力開発校) ・(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構営 ・都道府県営(国からの委託) ・都道府県(障害者職業能力開発校・職業能力開発校) ・民間教育訓練機関等(都道府県からの委託) |
参考:ハロートレーニング(公共職業訓練・求職者支援訓練)の全体像|厚生労働省
公共職業訓練では、主にものづくり分野の訓練を国や都道府県の機関が行い、福祉・医療系やサービス系、事務系などの訓練を都道府県が委託した民間の教育訓練機関が実施しています。
(2)求職者支援訓練
求職者支援訓練は、主に雇用保険を受給できない求職者の再就職に必要なスキルや知識の習得を支援する制度です。
求職者支援訓練の制度の概要を以下にまとめました。
対象者 | 〇主に雇用保険を受給できないハローワークの求職者 ・雇用保険の適用がない離職者 ・フリーランス・自営業を廃業した人 ・雇用保険の受給が終了した人 ・一定額以下の収入のパートタイムで働きながら正社員への転職や社内での正社員転換を目指す人など |
受講料 | 無料(テキスト代等は自己負担) |
受講の要件 | ・ハローワークに求職申込みをしていること ・雇用保険被保険者や雇用保険受給資格者でないこと ・労働の意思と能力があること ・職業訓練を行う必要があるとハローワークが認めたこと |
訓練期間 | 2~6か月 |
実施機関 | 厚生労働大臣が認定した民間教育訓練機関等 |
求職者支援訓練には、ビジネスマナーやパソコンスキルなど基礎的能力の習得を目指す「基礎コース」と、介護福祉や医療事務、IT系など基礎的能力と実践的能力の習得を目指す「実践コース」があります。
2.職業訓練校(ハロトレ)の訓練コース
職業訓練校には、事務系からIT系、建設、製造、サービス、介護などさまざまな分野の訓練コースが設けられています。
以下は、職業訓練校で受けられる訓練コースや関連資格の例です。
訓練分野 | 関連資格 |
事務 | 簿記検定・表計算検定・ワープロ検定・計算実務検定・社会人常識マナー検定 |
介護・サービス | 介護職員初任者研修・介護事務管理⼠・介護福祉士実務者研修 |
医療事務 | 医療事務認定実務者試験・表計算検定・ワープロ検定 |
電気設備技術 | 第二種電気工事士・第一種電気工事士・消防設備士 |
工場管理技術 | 第二種電気工事士・消防設備士・品質管理検定(QC検定)・中小企業診断士(経営管理) |
IT系 | ITパスポート・基本情報技術者・LinuCレベル1・LPICレベル1・ウェブデザイン技能検定・CCNA・OSS-DB Silver |
上記以外にも、住宅リフォームやOAシステム開発、Web設計、宅地建物取引主任者など、幅広い訓練コースがあります。
このように職業訓練には多種多様な分野がありますが、地域によって設けられている訓練コースは異なります。
ハローワークインターネットサービス職業訓練検索では地域ごとに訓練コースの検索ができるので、興味のある方はぜひご活用ください。
3.職業訓練校(ハロトレ)の5つの特徴・メリット
職業訓練(ハロトレ)を受講するメリットを以下5つ紹介します。
順に説明します。
(1)基本的に無料で受講ができる
職業訓練(ハロトレ)は公的な制度なので、受講料が基本的に無料です。
テキスト代などは自己負担ですが、1~2万円ほどで仕事に役立つ知識やスキルを習得できることはメリットといえるでしょう。
ただし、「1.職業訓練校(ハロトレ)とは?」で紹介したとおり、在職者向け・学卒者向けの公共職業訓練は有料です。
(2)要件を満たせば給付金が受給できる
要件を満たせば給付金を受け取りながら職業訓練を受けられる点も、ハロトレの特長です。
公共職業訓練の場合は、雇用保険(失業保険)を受給しながら訓練を受けることができます。
加えて、1日あたり500円の受講手当と、一定の要件を満たせば通所手当や寄宿手当てが支給されます。
求職者支援訓練の場合は、以下の要件をすべて満たせば1か月あたり10万円の受講給付金の受給が可能です。
公共職業訓練と同様、通所方法によって通所手当や寄宿手当てが支給されます。
- 本人収入が月8万円以下(シフト制で働く場合は月12万円以下)
- 世帯全体の収入が月40万円以下
- 世帯全体の金融資産が300万円以下
- 現在住んでいるところ以外に土地・建物を所有していないこと
- 訓練の8割以上に出席していること
- 世帯の中で同時に受講給付金を受給して訓練を受けている人がいないこと
- 過去3年以内に、偽りその他不正の行為により、特定の給付金の支給を受けたことがないこと
※1・2・5は令和5年3月末までの特例措置です
出典:求職者支援制度のご案内|厚生労働省
給付金を受け取りながら仕事に役立つスキルを身に付けられることは、経済的な不安のある求職者にとって大きなメリットといえます。
(3)託児サービスが付いた訓練コースがある
職業訓練の中には無料で託児施設を利用できる訓練コースがあるため、妊娠や出産で一度離職した人も子育てをしながら職業訓練を受けらます。
託児サービスがある訓練コースは、ハローワークインターネットサービス職業訓練検索で、探すことができます。
(4)資格取得を目指せる
ハロトレの中には第一種電気工事士や宅地建物取引主任者など、資格取得を目指すコースもあります。
テキスト代や受験料のみで資格試験に挑戦できる点は、ハロトレの魅力でといえます。
資格が取得できれば、未経験の仕事であっても就職活動を有利に進めることができるでしょう。
(5)未経験の仕事に挑戦しやすくなる
「目指したい仕事はあるけど、経験も知識もない…」といった求職者でも、ハロトレでは基礎的な知識から学ぶことができます。
職業訓練の受講や資格を取得することで企業に仕事への意欲をアピールできるため、未経験の仕事でも挑戦しやすくなる点もハロトレの特長です。
4.職業訓練校(ハロトレ)の5つの注意点・デメリット
職業訓練(ハロトレ)の受講にはメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあります。
順に説明します。
(1)希望する職業訓練を受けられないケースもある
ハロトレの注意点は、IT関連や事務系など人気のある訓練コースは応募者数が多く、選考で落ちてしまうケースがあることです。
たとえば東京都の委託訓練の場合、倍率の低いコースもあるものの、中にはWebデザイナー科2.73倍、システム開発科4.13倍など高倍率のコースもあります。
選考に落ちてしまったからと、次回の訓練コースの選考まで待っていると失業期間が長くなってしまい、就職活動で不利になってしまう可能性も考えられます。
(2)職業訓練を受けても就職できるとは限らない
職業訓練は、あくまでも仕事に必要な知識やスキルを習得する制度であって、受講者の就職先が保証されている制度ではありません。
令和2年の職業訓練実績では、公共職業訓受講者の就職率は平均77.5%、求職者支援訓練受講者の就職率は平均56.25%でした。
同年に厚生労働省が発表している大学生の就職内定率の89.5%と比較すると、職業訓練校受講者の就職率は低いえます。
実際に職業訓練修了後にすぐ希望条件に合う求人が見つかるとは限らず、就職活動が難航することもあるようです。
そのため、職業訓練の受講期間内であってもハローワークや転職エージェントを活用して、求人に関する情報収集は行いましょう。
(3)就職まで時間がかかってしまう
ハロトレの注意点として、就職まで時間がかかってしまうこともあげられます。
職業訓練を修了してから就職活動をする場合、少なくとも3か月以上、長期間の訓練コースだと1~2年就職活動ができません。
雇用保険の受給額は前職の給与の3分の2なので、就職まで時間がかかると経済的に厳しくなる可能性もあります。
前項でも述べたとおり、職業訓練を修了してすぐに就職先が決まるとは限らないので、訓練を受けながら求職活動を行うことがおすすめです。
とはいえ、訓練は基本的に朝から夕方まで授業があり、授業時間外も予習や復習を行う必要があるため、なかなか求職活動のために時間を割くことが難しいでしょう。
職業訓練を受けながら求職活動をするためには、転職エージェントを活用するなど時間を上手に使う必要があります。
(4)基本的に入門的な内容しか学べない
訓練内容が基礎的であることも、ハロトレの注意点といえます。
職業訓練のレベルは知識や経験が全くない人に合わせているため、人によっては「簡単すぎて学ぶ意味がない」と感じることがあるようです。
特にパソコンスキルに関するコースは、ファイルの保存方法など初歩的な内容から丁寧に学ぶ授業もあり、学生時代にパソコンの授業を受けている20代には簡単すぎる可能性があります。
そのため、訓練校のパンフレットに記載されている授業内容の確認や訓練校の説明会・見学会への参加などを行って、訓練内容を把握したうえで訓練コースを選ぶようにしましょう。
(5)複数のコースに通うことはできない
職業訓練は1度に1つのコースしか通えないことも頭に入れておきましょう。
また、職業訓練を受講すると訓練終了後1年間は、他のコースを受けることができません。
これは途中で退校した場合も同様なので、たとえば授業が始まってから「自分には合わない内容だったかも」と後悔しないように、受講の申し込みをする前に訓練内容はチェックしておきましょう。
5.職業訓練校(ハロトレ)を受講するまでの流れ
職業訓練を受けるまでの流れは、以下のとおりです。
順に説明します。
(1)ハローワークの窓口に行く
まずはハローワークの窓口に行って求職申込みを行い、職業相談をします。
職業訓練を受けたい旨を相談員に話すと、現在応募できるハロトレの案内をしてくれるので、希望の訓練コースを選んで受講申込書などの必要書類を受け取りましょう。
事前にハローワークインターネットサービス職業訓練検索で、興味のある訓練を決めておくとスムーズです。
また、職業訓練受講給付金の受給を希望する人は、この時点で職員に相談しておきましょう。
(2)職業訓練の受講申し込みをする
申し込む訓練コースが決まったら、受講申込書を作成してハローワークに提出します。
ハローワークが申込者に職業訓練が必要でないと判断した場合は、希望した訓練の申し込みができないケースもあるため、志望動機欄はしっかりと書きましょう。
給付金を受給したい場合は、受講の申し込みと同時に事前審査の申請も行います。
(3)選考を受ける
受講の申し込みができたら、訓練校の選考を受けます。
選考方法は訓練コースによって異なりますが、以下の3つのパターンに分けられます。
- 書類審査のみ
- 書類審査・面接
- 書類審査・面接・筆記試験
どの選考方法でも再就職への意欲や訓練に対する熱意を重点的に見られるので、志望動機はしっかりと考えておきましょう。
以下の記事では、職業訓練校の志望動機の考え方を詳しく説明していますので、こちらもぜひ参考にしてください。
(4)合格したら受講あっせんを受ける
訓練実施機関から合格通知が自宅に届いたら、訓練開始日の前日までにハローワークで「就職支援計画書」の交付を受けます。
同時期に受講給付金の事前審査の結果が通知されるので、給付金を受給できる人は訓練受講中の支給申請に関する説明をハローワークで受けましょう。
入校手続きが完了したら訓練の受講がスタートしますが、「4.職業訓練校(ハロトレ)の5つの注意点・デメリット」でも解説したとおり、訓練中であっても求職活動を行うことがおすすめです。
転職エージェントに相談すれば、未経験でも挑戦できる求人を紹介してもらえることがあり、数ヶ月以上かかる職業訓練を受けなくても、希望する仕事に就ける可能性があります。
以下の記事では、ハローワークだけでなく転職エージェントを活用するメリットなどを詳しく解説していますので、こちらもぜひ参考にしてください。
まとめ
本記事では、職業訓練(ハロトレ)の受講を検討している人に向けて、ハロトレの制度内容やメリット・デメリット、受講の流れを解説しました。
ハロトレは無料で仕事に役立つスキルを学べますが、ハロトレを修了しても確実に就職先が決まるわけではありません。
そのため、ハロトレと並行して求職活動を進めることが大切です。
転職エージェントに相談すれば、未経験でも挑戦できる求人を紹介してもらえることがあるので、ハロトレだけでなく転職エージェントも活用しましょう!