大学中退のメリットとデメリット|中退の経歴は将来不利になるの?
「大学を途中で退学してしまうと就職できない」「自分のステータスに傷がついてしまう」と考えてしまう人も多いのではないでしょうか。確かに大学を中退するデメリットはありますが、一方でメリットも多々あります。特に「本当に自分がしたいこと」を実現するために、中退はむしろひとつの前向きなきっかけになることもあります。
今回の記事では、大学を中退するかどうか迷っている人、また大学中退後どうすればいいのか分からくなっている人に向けてさまざまな情報をまとめています。ぜひ今後の進路決定の参考にしてみてください。
》大学中退者が就職するには?就活に必要な心構えとおすすめの職種
Contents
1.大学を中退する理由とは?
大学を途中で辞める主な理由
独立行政法人労働政策研究・研修機構の研究資料によると、大学を中退する主な理由は以下のようになっています。(男女平均値)
・学業不振・無関心 (42.9%)
・家庭・経済的理由 (19.3%)
・進路変更 (15.1%)
・病気・ケガ・休養 (10.9%)
・人間関係・大学生活不適応 (10%)
男女共に最も多いのが「学業不振・無関心」で、この理由で中退した人の7割以上が「特に目的なく進学した人たち」といわれています。「家庭・経済的理由」においては男女での差が大きく、男性が16.8%なのに対し、女性は24.7%と高くなっているのが特徴です。
》大学中退の理由は何がある?面接や履歴書で説明するときのポイント
中退した人のその後の行動
中退した人のその後の動向についてのデータは以下のようになっています。
・正社員として就職するために準備をした人(32.1%)
・アルバイトを探した (31.8%)
・在学中のアルバイトを継続した (27.3%)
・資格取得のために勉強した (10.6%)
・特に何もしなかった (8.5%)
・入学するために勉強した (3.9%)
全体のうち46.6%が中退理由として「正社員として就職したい」と回答しているものの、このうち実際に「正社員として就職するために準備をした人」は32.1%に留まっています。また、中退後にバイトをする人の割合も多くなっています。こうした背景には「中退者が正規雇用されるための就職活動の仕方が分からない」「フルタイムのアルバイトをしながら就職活動をするのは困難」などがあるようです。
※参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構 「大学等中退者の就労と意識に関する研究」
2.大学中退のメリット・デメリット
大学中退のメリット
・自分の好きなことに専念できる
大学では勉強したくない分野まで授業を受けなければならず、またカリキュラムの拘束などもあって、なかなか「自分が本当にやりたいこと」「目指したいこと」ができません。大学を中退するとこうした拘束がなくなり、「本当にしたいこと」「自分が好きなこと」「目指したいこと」に専念できるようになります。
中退後にしたいことが明確になっている人ほど、その行動はスムーズで活力にあふれていることが多いようです。例えば「起業したい」「誘われた会社で働きたい」「資格を取りたい」「社会貢献がしたい」「関心事に時間を費やしたい」「海外に留学したい」など、自分の目標に向かって伸び伸びと進んでいくことが可能になります。
起業や就職ではなく「別の大学で学び直したい」「新しい学部・学科に入りたい」など、他の大学への編入・再入学を目指す人もいます。
・ストレスが軽減される
大学生活にはさまざまなストレスがあります。まず一つ目は学業のストレスで、興味のない講義を受け続けることや、日々の勉強生活そのものが苦痛になり、単位不足から留年する人も多くみられます。「大学での勉強なんて社会に出てから役に立たない」「資格取得のために勉強したほうがよい」と考え、中退を決める人もいます。
もう一つは人間関係のストレスです。どうしても大学の人間関係になじめない、大学生活に適応できないという人も多く見られ、そういう人たちにとっては日々の大学生活はストレスでしかありません。大学を中退することで、大学における人間関係や性格に合わない大学生活から解放され、新しい気持ちで再スタートを切ることができます。
・学費を払わなくて良くなる
当然のことですが、大学を中退すれば学費を支払う必要がなくなります。大学にかかる学費は全体で数百万かかるのが普通ですから、その支払いは容易ではありません。高い学費を払いながら「大学に通う意義が感じられない」という人にとっては、学費の支払いは無駄遣いに感じられます。無駄にお金を使い続けるよりも、もっと別の有意義なことにお金を費やしたほうがよいでしょう。
・早いうちから社会を知ることができる
人によっては「大学で勉強するより、社会経験を積んだほうがずっとよい」と考える人もいるでしょう。バイトであれ、ボランティアであれ、実際に社会の現場で活動することで大学での勉強以上のことを学ぶこともできます。早いうちから社会を知ることで、知識や経験、人間形成などの面で大きなメリットを得ることも可能です。
大学中退のデメリット
・最終学歴が高卒になる
大学を中退すると最終学歴は高卒になります。履歴書などに最終学歴として大学名を記載するには、その大学を卒業しなければなりません。中退した場合、履歴書には中退した旨を記載する必要があります。日本は学歴社会の傾向が強いので、学歴がないことによって就職・給料・出世・結婚・人間関係などに悪影響を及ぼす可能性があります。
・就職が不利になる
学歴を重視する企業では、学歴がない人物はそれだけで採用される可能性が低くなります。大卒(新卒)を条件として求人を行っている企業には、そもそも応募することさえできません。たとえ大卒が条件でなくとも、履歴書に記載されている「中退」を理由に採用が弾かれる可能性もあるでしょう。
・奨学金の問題
賃与型の奨学金を利用していた場合、中退しても(大卒資格がなくても)それまでの奨学金は返還しなければなりません。貸与型奨学金の返還は、中退手続きが完了した月(貸与終了後)から7カ月目に始まります。基本的に一括払いではなく、月々の分割払いになるので、中退後に仕事もしないままだと毎月の返済が難しくなることもあります。
・学生割引サービスを受けられない
中退すると学生が利用できるさまざまな学割サービスが受けられなくなります。電車の定期券、映画館や美術館などの割引利用、携帯電話の契約料金の学割サービスなどを受ける権利を喪失します。
3.大学中退がハンデにならない人とは?
中退後の目標や目的が具体的な人
明確な理由をもって大学を中退した人ほど、それがハンデになりにくい傾向があります。中退後に何をするべきか決まっている、この先の目標が決まっている・・・こういう人は中退後に行動を移しやすく、迷いなく日々の活動に精を出すことができます。逆に中退理由が明確ではない、中退後にやるべきことが決まっていない、これといった目標がない・・・こういう人は中退後に進路で後悔あるいは迷うことが多くなります。
また、就職中の面接では非常に高い確率で「中退理由」を聞かれます。そこで曖昧な回答をしたり、面接官に悪印象を与えるネガティブなことを言ってしまったりすると採用の可能性は低くなります。面接対策として、「経済的な困窮のためやむなく中退した」「資格を得るために中退した」「できるだけ早く社会経験を積みたかった」「別の勉強をするために進路を変更した」「その大学では自分が本当にやりたいことが見つからなかった」など、明確な理由があれば面接の際にも不利には働きません。
中退後の目的をしっかり持つこと
中退するかどうか迷っている人は、中退後のデメリットを把握したうえで、中退後のはっきりとした目的と計画を持ってから中退を決断するようにしましょう。中退のデメリットを踏まえて、それでも「中退したほうがよい」と明確に強い意志を持てる人、新たな目標に向かって進める人ほど中退がハンデにはなることは少なくなります。自分が本当にしたいことは何か、どんな仕事をしたいのか、どの方向に向かっていきたいのか。こうした点を考慮して「自分の人生にとってどの選択が最善か」を慎重に判断してみてください。
》大学中退後のキャリアを築くには?主な進路と就職を成功に導くコツ
4.大学中退後の主な進路
ほかの大学や専門学校などに再入学する
大学中退の理由が「他の学科で学びたい」「専門知識を習得したい」など、純粋に学問的なものであれば他の大学や専門学校への再入学を検討することになります。
自分の将来就きたい仕事に関連する分野の専門学校に再入学する、予備校に通ったのち行きたかった大学に再チャレンジする、未経験から手に職を付けるため専門学校や公共職業訓練校に通う、などさまざまな進路があります。
アルバイトや派遣社員として働く
本格的な就職活動や正社員採用を目指す前に、まずは目の前の経済的な安定を優先してアルバイトや派遣社員として働くという選択肢もあります。経済的な安定を図るだけでなく、そのバイトや派遣の仕事が、将来自分が就きたい職種であれば今後の就職に有利に働くこともあります。近年は「紹介予定派遣」のシステムを利用して、派遣社員から正社員を目指す人も多くなっています。
具体的な目標や就きたい職種が定まっていない人は、いったんフリーターとして働き、将来の目標に向けてお金を貯めるという選択肢もあります。
公務員を目指す
公務員試験は、大学中退者であっても年齢制限をクリアしていれば誰でも受験することができます。
・国家公務員の場合
大学中退者(高卒者)が国家公務員を目指す場合、「高卒程度試験」を受験するのが一般的です。高卒程度試験の年齢制限は「中学および高校を卒業した日から2年以内」となっています。卒業後、3年経ってしまうと高卒程度試験を受けることはできません。
高卒程度試験には「一般職試験」と「専門職試験」があります。一般職では各省庁やさまざまな行政機関に配属され、事務処理・デスクワークをメインとした仕事を行います。専門職は皇宮護衛官、刑務官、入国警備官、税務職員、海上保安大学校学生など各専門知識を活かした行政機関で仕事をすることになります。その他の国家公務員として裁判所職員、衆・参議院事務局職員などがあります。
・地方公務員の場合
地方公務員を目指す場合、各地方自治体で実施される地方公務員試験を受ける必要があります。大学中退者であれば「初級(高校卒程度)」の試験を受けることになります。
地方公務員の職種には窓口担当をメインとした行政職、デスクワークの事務職、土木・建築・電気・機械・農業などの技術職、警察官・消防官などの公安職などがあります。
正社員として就職を目指す
大学中退後に積極的に正社員を目指す人も多いです。正社員はバイトなどに比べると、単に給料が良いだけでなく、福利厚生がよい、キャリアアップしていけるなどのメリットがあります。
近年は学歴や職歴関係なく正社員を求人している企業も多いです。とはいえ、全くなんの知識も技術もないと採用されるのは難しくなるので、中退後に正社員として必要とされる知識と技術を学び、就職活動の準備をしっかり整えておくことが重要になります。就活の準備のポイントとしては以下のことが挙げられます。
・目指す職業、業界研究をする
・自己分析を行って目指す方向性を決める
・同じ職種のバイトをして知識や技術を獲得する
・求人サイトや人材紹介会社を利用する
・大学中退者向けの履歴書作成方法を理解する
・大学中退者向けの面接方法を理解する
》大学中退者は正社員を目指せる?就職活動を円滑に進めるためのコツ
5.大学中退後に正社員として就職を目指すには
中退理由を明確にする
大学中退者が正社員として採用されるには、面接の際に中退理由を明確に答えられるかどうかがひとつのポイントとなります。なぜ辞めたのか、どんな理由があったのかを明確に、ポジティブに答えられるように用意しておきましょう。もしもネガティブな理由で中退してしまった場合でも、その反省を今後どう活かしていくのかを上手く説明できればそれほど悪印象にはなりません。
自分のやりたいことを明確にする
正社員として就職を成功させるためには自己分析をしっかりと行い、自分はどの分野で仕事をしていきたいのか、自分が本当に向いている職種は何なのか、といったことを知ることが大切です。この点が中途半端だと、何を学び、どんな技術を得ていいのかが分からなくなります。自分が本当にやりたいことを見つけ、その自分の方向性と応募する企業・業界の方向性が一致しているかどうかを確認しましょう。
企業研究をしっかりと行う
面接の際には必ず「なぜその企業に応募したか」を聞かれます。ここで明確に答えられると面接官に好印象を与えることができます。大学中退者という点を逆に強みにして、なぜその企業を応募したか熱意をもって語れるように準備しておきましょう。また、自分が本当にやりたいことと企業の方向性(事業)がどれくらいマッチしているかを答えられるようにすると、採用される確率も高まります。ほかにも、その企業のどのような部分に魅力を感じたかを話せるように、社風や事業展開の内容などを詳しく知っておくことも大事です。
》転職活動がうまくいかないのはなぜ?よくある悩みと原因、対策方法
6.大学中退を強みにして就職を成功させよう
大学中退をポジティブに捉えると新しい「キャリアスタート」といえます。本当に自分のやりたいことがあったからこそ大学を辞めた・・・その熱意と強い意志は逆に就職においては強みにもできます。大学中退を「挫折」や「失敗」としてではなく、むしろ自身のキャリアと考え、進むべき道のために「大学中退は必要だった」と自信をもって言える人、前向きに勝負していける人こそ良い結果になりやすいでしょう。
特定の制限や条件を設けている企業を除き、就職には基本的に学歴は関係ありません。大学中退者であろうと、本当にその仕事に就きたいという熱意があればごく自然と評価され、キャリアの扉は開かれるものです。逆に熱意や方向性がなく、自己分析もせず、ただ漫然と日々を過ごすだけならばキャリアの道は閉ざされたままでしょう。
「なぜ大学を辞めたのか?」
「それは~という理由があったから!」「目指したい道があったから!」
その熱意と努力、その方向に進んでいくという強い意志こそ、中退後の就職を成功させる大切なポイントといえます。